2021.11.02
シアワセの最適解~世帯年収3,600万の夫婦~ Vol.1子どもが誕生し、億ションに住み替えたものの…
「はー、やっぱりこの景色、大好きだな」
井の頭通りを歩きながら、奈美は独り言とともに大きな伸びをした。
今住んでいるマンションは、代々木上原駅から徒歩圏内、東京ジャーミイや井の頭通りの並木道が見える景観が気に入っている。
代々木上原は、都心でありながら閑静で緑豊か、人気のレストランも軒を連ねており、一度住んでしまうと抜け出せくなる不思議な魅力がある。
広尾に住んでいたケンタを引き込み、かれこれ10年。
住人が出ていかないので、マンションは賃貸・分譲共に常に供給不足が続く。そのため迷う暇もなく、今回の住み替えを決めることとなったのだ。
「ただいま!ケンタ、一緒にバインミー食べよう」
「ありがとう。ここのバインミーは最高だよな」
書斎から出て、リビングのダイニングチェアーに腰かけたケンタの機嫌は直っているようだ。
― よかった。
安堵したのもつかの間、ケンタが口を開いた。
「さっきの話の続きだけど、やっぱりこの家狭すぎるわ。住んでみてわかったけど、最低でも100平米はないと俺は無理!」
予算1億円を大幅にオーバーしたが、今住むマンションの広さは70平米余り。引っ越し当初はそれなりに満足して住んでいたものの、アメリカ暮らしが長かった彼の気持ちは長く続かなかったようだ。
「また買い替える?今は俺しかローン組んでないけど、奈美も組めばもっと広い家買えるんじゃない?金融機関勤めなら信用力あるだろうし」
「えっ!また?まだ住んで2年だし、前のマンションも結局2年で売却したのに?」
新築マンションのギャラリーで若手営業マンは、奈美たちの世帯年収であれば予算2億円で検討する人も多いと言っていた。果たして本当なのだろうか?
高額物件を購入すれば、諸経費・税金も更に高くなる。一方で、車、海外旅行、外食にお金を使いたい、息子の教育費や老後の生活費も貯めないと…と考えると、現実的ではないだろう。
「それか、住むエリアを変えるかだな。だいたい奈美は何でそんなに代々木上原にこだわるわけ?」
「だって、好きなんだもん…」
「俺ももちろん上原は最高って思うけど、奈美だってわかってるだろ?サラリーマンがどんなに頑張ったところで、ここでは下っ端の暮らししかできないの」
そう言い捨てると、デロンギで淹れたコーヒーを片手にケンタは書斎へと戻っていった。
近所に住むのは先祖代々のお金持ちや、政財界の著名人。ケンタの放った言葉は、まさに奈美が目を背けてきた現実だ。
― この先どうなるんだろう、引っ越し?でも、どこに…?
ベランダに出ると眼下には、新緑の並木道と高架上を通り過ぎる小田急線が見える。
― 参宮橋とか…?職場がある二重橋前まで一本で行けなくなるのキツいな…。それか、思い切って鎌倉とか?ケンタの周りで引っ越してる人多いって言ってたし…。
2人で努力して築いた、今の暮らし。
でも世帯年収は倍近くになっても、幸福度は倍にはならないという現実に茫然としてしまう。
そしてこの「今のマンションが狭い」という不満を発端に、2人の前にさまざまな困難が襲いかかるのだった。
▶他にも:「実は、私ね…」ベッドの中で、年上妻が夫に打ち明けた衝撃的な秘密とは
▶Next:11月9日 火曜更新予定
次週、年間300万円以上の住民税を納めても、認可の保育園には入れないという実情。
今日始まった連載二つとも、勝ち組というワードが出てくるけど、人生を勝ち負けで表現するのは、個人的にあまり好きじゃないなぁ…。
今日の内容は…もうちょっと深掘りして書いてくれたらより面白かったのかもしれないなぁ。完全リモートなら、鎌倉の広い古民家を買うのも有りだと思う!
【シアワセの最適解~世帯年収3,600万の夫婦~】の記事一覧
2022.01.10
Vol.12
わずか2年で挫折…!?キャリアと子どもの教育のため、海外移住した外資系エリート一家の誤算
2022.01.09
Vol.11
海外移住したサラリーマン一家の選択「シアワセの最適解~世帯年収3,600万の夫婦~」全話総集編
2022.01.03
Vol.10
子どもの教育に、莫大なお金を投資するサラリーマン世帯。加熱する海外の受験戦争の現実
2021.12.27
Vol.9
「家事や育児だけしていても、虚無感しかない」専業主婦に向かない女たちの悲痛な叫び
2021.12.20
Vol.8
代々木上原の億ション暮らしから、転落した女。一度手にした贅沢が忘れられなくて…
2021.12.13
Vol.7
120平米超え豪華マンションで優雅に暮らす女。それでも幸せを感じられないって、どうかしてる…
2021.12.06
Vol.6
「億ションなんて買わなきゃよかった…!?」世帯年収3,600万夫婦が、後悔した理由
2021.11.29
Vol.5
大学費用だけで2,000万!?“海外で子育て”を決意したものの、金銭問題に直面…
2021.11.23
Vol.4
「2億の損失か、それとも…」シッターからのLINEに泣き崩れる39歳女。キャリアママに迫られる選択
2021.11.16
Vol.3
『福翁自伝』を読んでお受験 or 年間400万払ってインター?無謀な選択肢に戸惑う妻
おすすめ記事
2017.07.25
マウンティングの虚像
いよいよ明日で最終話!「マウンティングの虚像」全話総集編
- PR
2025.03.31
結婚1年目から、激務のせいでギスギス…。崩壊寸前のパワーカップルを救ったアイテムとは?
2018.05.21
Fragile Love
Fragile Love:「これは、夢…?」銀行の出世争いを必死に勝ち抜いてきた、アラフォー社畜オヤジの恋
2020.11.21
私、やっぱり結婚がしたい
平日夜20時45分に、男から初デートの誘い。呼び出された場所を見て、女が凍り付いた理由
- PR
2025.03.31
えっ、あの“ミャクミャク”の部屋に泊まれる!?どっぷり万博に浸れる、いまだけのホテルステイとは…
- PR
2025.03.25
牛肉の本場・大阪で最高のステーキを! 極上の「アメリカンビーフ」を楽しめる珠玉の4軒
- PR
2025.03.26
春旅するなら万博でも話題の西日本へ!大人が満足する贅沢時間を過ごせるホテル4選
2021.11.25
私の年下くん
33歳女がひと回り年下男の告白をスルーしようとしたら、グイグイ押され…
- PR
2025.03.27
7種類ものフレーバーが楽しめる! この春、台湾生まれのフルーツビールが話題!
- PR
2025.03.28
ほろ酔い美女の正体とは!?17LIVEの人気ライバー4人を、港区のバーにお連れしてみたら…
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2025.03.19
運命なんて、今さら
初めて彼のマンションを訪れた28歳女。しかし、滞在10分で、突然「帰りたい」と思った理由
2025.03.22
男と女の答えあわせ【Q】
「豊洲に住んでいる」と33歳男が言った途端に、デート相手の女が戸惑ったワケ
2025.03.23
男と女の答えあわせ【A】
「年収800万くらいでもいいかな…」相手に求める条件を妥協したつもりの30歳女の大誤算
2025.03.17
1LDKの彼方
「何もないって言われたけど…」彼氏が他の女と連絡を取っていたことが発覚。30歳女は思わず…
2025.03.20
TOUGH COOKIES
「幸せそうな彼女がなぜ?」SNSで悪質コメントの犯人を突き止めたら、意外な人で…
この記事へのコメント