大失敗した中学受験
桜子が、東大生にこだわる理由。
それは、彼女が小学生の時までさかのぼる。
猛勉強して臨んだ中学受験に失敗したとき、桜子は自分の能力の限界を悟った。
桜子は、川崎生まれ・川崎育ち。両親は2人とも、公立王国・福井県の出身だから、中学受験には縁がない。
ところが、ママ友の影響で中学受験に目覚めた母。長女の百合子を小学6年生から塾に通わせ、奇跡的に日本女子大学附属中学校に合格させたのだ。
調子に乗った母は、「もっと早くから勉強させたら、女子御三家も夢じゃないかも!?」なんて夢を見始める。そのとばっちりを受けたのが、桜子だった。
両親の期待を一心に背負い、桜子は小学3年生から、宿題の量が尋常じゃないことで有名な進学塾に通うことになる。
けれど中学受験を経験していない両親は、勉強は塾に任せきり。
「ママ、つるかめ算ってどうやってやるの?」
「うーん…。塾の先生に聞きなさい」
こんなやりとりが何度繰り返されたかわからない。終わらない宿題に、桜子は次第に追い詰められていった。
親が私立中高を経て有名大学を出ている家庭は、家でのフォロー体制も整っている。そんな家で育った子たちは、順当に難関私立中学に合格していった。
しかし桜子は、御三家の門を叩くレベルには遠く及ばず、姉が合格した日本女子大の附属にも引っ掛からなかった。
第6志望の横浜の中高一貫の女子校へ進学が決まった日、12歳の桜子は『人生終わった』と思った。
悔しくてたまらなかった桜子は、どうやったら人生を逆転できるかについて、考えるようになる。
そして、その答えを2年後に見つけた。
日本女子大学に進学した姉・百合子が東大のインカレサークルに入会し、東大生の彼氏をゲットしたのだ。
― これだ!!
桜子はひらめいた。
― 私も、女子大に進学して東大のインカレサークルに入ろう!
そこで東大生と出会って結婚して、人生を一発逆転させる。優秀な人と結婚すれば、優秀な子が生まれる。子どもに自分と同じ思いはさせなくてすむ。
14歳の桜子は、人生のシナリオを描いた。
受験勉強はもうしたくないと思った桜子は、評定をコツコツと積み上げ、指定校推薦で東京女子大学に進学する。
そして迷わず東大のインカレサークルに入会し、テニスという名目の下に東大生と青春を謳歌する日々を送った。
しかし、いくつか恋はしたものの、結局は実らず、26歳の今もフリーの身。
「ただいま〜。お、桜子ちゃん、来てたんだ」
桜子が物思いにふけっていたとき、息子を連れて散歩に出ていた百合子の夫が帰ってきた。
「お義兄さん、こんにちは。お邪魔してます」
急に背筋を伸ばして、笑顔を彼に向ける。姉の彼氏として紹介された時から10年以上経つが、それでも少しは気を使う。
― お義兄さん、今日も素敵。開成卒・東大法学部出身のイケメン弁護士なんて、完璧よね…。
桜子がこの家に頻繁に遊びにくる理由。それは、「早く自分もこのフェーズに行こう」と、自分に発破をかけられるからだ。
― 落ち込んでちゃいられないわ。気持ちを切り替えて、頑張ろう。
気合を入れ直し、スマホを手にする。次の出会いを求め、ある人物に連絡したのだった。
この記事へのコメント
コメディとして読めばいいのかな。
実家の近所に両親が東大卒の家庭、子供は中卒。
私立の受験に失敗して、公立で中学の途中から不登校になり、進学せず。そのままずっと仕事もせずに引き篭もり。