vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~ Vol.2

「私、何やってるんだろう」可愛くなりたくて自分に“投資”した女が、職場で聞いてしまった衝撃の事実

そして迎えた、月曜日。

みんなを驚かすために意気揚々と身支度をしていると、父親が嬉しそうに声をかけてきた。

「園子、なんかキラキラしてるなあ。さすが美人ぞろいの営業部の子だ!」

園子はその言葉にはにかんだ。試着したワンピースは、とても気に入ったので即決。その後、クロエでバッグも購入した。

さらに日曜日は、フェイシャルサロンとエステでメンテナンス。そして、美容院で酸熱トリートメントなるものをしたら、髪は嘘みたいにツヤツヤとなった。

― でしょ!変わったでしょ!

父親の言葉をお守りに、いつもよりマシな気持ちで出社すると、早々に手応えがあった。

「えー?山科さん、なんか雰囲気変わった!」

「ね!そのワンピース、可愛いですね!」

デスクに来てみると、その島の女性社員たちは以前とは違う園子の姿を見て、一気に反応したのだ。

園子はニコニコしながら、お礼を言って席につく。ウキウキする気持ちが止まらなかった。

― 馴染めるかもしれない!

ここ数日、心臓をずっしりと重たくしていたものが取り払われたような気分だった。引継ぎ研修にも身が入る。

…けれど、そんなに単純なものではないことを数時間後に思い知ることになる。



「お疲れさまでした」

軽い足取りで執務室を出ると、エレベーターホールから話し声が聞こえてきた。


「雰囲気、すごく変わったと思わない?」

聞こえてきたのは、女が陰口を言うとき特有の口調だ。小さい声で、深刻そうに、それでいて何よりも楽しそうな声。

園子はそういうのを感じるアンテナが発達している。だから、エレベーターホールの手前で足を止めた。

「…ね、さすがご令嬢なだけあるよね。お金にものいわせてる感じ」

「お金をかければいいってもんじゃないよねえ」

― やっぱり私の話だ。

「あの人のトレーナー、清華さんらしいよ」

「やば。天然美人と金持ち不細工のコンビじゃんね」

「ウケる」

まもなくエレベーターが開く音がして、陰口と笑い声は止んだ。

― やっと行ってくれた。トレーナーの清華さんって美人なのか…。

園子は少し身構え、なぜ社会人になってまで、こんなことに悩まされるんだろうと思った。

見た目についてやいやい言われるのなんて、中学、高校くらいで終わるものだと思っていたのだ。それが、大学生になっても、社会人になっても続く。

これが世の中なのだろう。

しん、としたエレベーターホールに立ち、ガラス越しに広がる港区の夜景を見下ろしてみる。

― 私、何やってるんだろう。

美しい夜景を見ていると、この週末のことが馬鹿馬鹿しくなってくる。乗り込んだエレベーターの中にある鏡に映った自分は、いつもとは違う。

フリルのついた艶やかなワンピース。フェイシャルサロンで整えた肌や、ツヤツヤにしてもらった髪。

…なのに、まったくパッとしない。

さっきの人が言った「お金をかければいいってもんじゃない」というのは、ド正論だと思った。

でも園子は、ため息をつかない。

だって、ここは仕事場だ。だったら仕事で見返してやると、そう決めたからだ。


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仕事で見返すと決意した園子の前に、現れた人物とは…

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