vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~ Vol.2

「私、何やってるんだろう」可愛くなりたくて自分に“投資”した女が、職場で聞いてしまった衝撃の事実

ある日の放課後のことだった。

クラスのお調子者の男子から、突然きゅうりを1本渡された。周囲は、クスクスと笑っている。

この時、園子は理解した。自分の顔が「河童っぽい」から「おかっぱちゃん」なのか、と。

「うわあ、ありがとう!きゅうり大好物だから嬉しい」

園子はそう言っておどけて笑いをとった。実際は、ちょっと泣きそうなくらい動揺していたにもかかわらず。

この瞬間から、園子は生きやすさを身につけ始めた。

それからもずっとおどけて生きてきた。“お笑い枠”に自ら入ることで、自分を守ってきたのだ。中学、高校、そして大学でも。

「明るいブス」

これは園子が大学生の時に、食事会の席で男の子から言われた言葉だ。心の中は、いつしかトゲのついた言葉でパンパンになっていた。

少しでも中を開いて覗いてみようとすると、こんなふうに生々しい痛みを伴って、言葉の数々がシーンとともに思い出されてしまう。

だから、園子はいつも心に封をするように笑顔を作るのだ。



誰もいないパウダールームで笑顔を作ってみると、鏡の中の見慣れた女も笑った。笑っていると、見られない顔ではないと園子は思う。

― ハンディキャップには慣れっこだ。でも、このまま黙っちゃいないから!

しぼんでいた気持ちが、むくむくと復活する。もう、おちゃらけてみせたりはしない。少しでも自分が綺麗になって、そして仕事もうんと頑張ると決めたのだ。

― 落ち込んだまま過ごすなんて若さの無駄づかいよ。この状況、とことん楽しんでみせる!

今日は、幸いなことに金曜日だ。この週末を有効に使えば、事態を少しでも好転させることができるかもしれないと、園子は考えた。

帰りの電車の中でスマホを開き、こう検索をする。

「さえない女 あか抜ける方法」


翌日の土曜日。園子は、伊勢丹 新宿店の3階で服を物色していた。

母親から与えられる無難な服を着て育ってきたので、26歳にして初めてとなる伊勢丹での服探しだ。

そもそも服を買うというのは、園子の苦手なことのひとつであった。

だって気になる服に手をふれた途端に、店員から声をかけられる。アパレル店員は決まって可愛いから、自分が値踏みされているような気がしてオドオドするばかりなのだ。

ということで、ハイクラスなお店などは論外だ。踏み入れるだけで迷惑がかかる気がすると、園子は思っている。それに、試着した姿を店員に見せるのも気が乗らない。

つまり、今日は相当“意を決した日”なのだ。

「あ、あれ可愛い…!」

目に止まったのは、マネキンが着ているミントグリーンのワンピースだ。

「今年流行りのカラーなんですよ〜」

緊張していた園子をほぐすような優しい声で、店員が近づいてくる。園子は、ひとつ呼吸をしてから言った。

「あの…試着してもよろしいでしょうか」

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