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vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~ Vol.1

vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~:「自分が可愛くないって知ってる」そんな女が屈辱を受けた、史上最低の出来事

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― 何これ、経理部と全然違うんですけど!

フロアは、なんだか甘やかな香りがした。

新年度というタイミングもあり、半数以上の人が出社していて社内は賑やかだ。そんななか、園子は指定された席につく。

するとその後すぐに、新年度総会が始まった。そこで園子は、挨拶をすることになっていたのだ。

「本日から配属となりました、山科園子と申します」

そう挨拶すると拍手が起こり、リモートで見ている人たちの拍手もスピーカーを通して聞こえてくる。園子は周りをぐるりと取り囲む社員たちに向かって、丁寧にお辞儀をした。

こうして見ると、明るい色の服を着た人が多い。

― なんで私、グレーのブラウスにブラウンのスカートなんかで来たんだろ。

たまらなくなった園子は、挨拶の後にこう続けた。

「私、元は経理にいたんですけど…。いやあ、噂通りの美人ぞろいでびっくりです。ちょっと私、服が地味過ぎましたね!…あ、顔もか」

誰かしら笑ってくれるものだと思っていたのに、その瞬間、空気が凍ったようになった。綺麗に化粧が施された彼女たちの目が、園子を値踏みするように見ている。

「ということで、まずは雰囲気になじむとこから頑張ります。あ、もちろん仕事も全力でやるので、いろいろ教えてください!」

また拍手が起こるが、その音はどこかよそよそしく聞こえた。


「ねえ。あの人、ウチには場違いじゃない?」

総会が終わりトイレに入っていると、洗面台スペースの方から女たちのヒソヒソ声が聞こえてきた。園子は個室から出ずに、耳をすませる。

「それね!悪目立ちしちゃって、なんか可哀想だよね」

― もう、思いっきり私の話じゃん!

美女がクスクスと笑いあう様子は、見ていなくても想像できる。

「でもさ、あの子をわざわざここに配属するって、人事が何を考えたのか聞きたいわ」

― 私も聞きたいですよ…。

「あの子、コネ入社らしいよ。だから自分でここを希望したんじゃないかな」

― 希望はしてない!

心の中でこっそりと切り返しながら、小さく地団駄を踏む。だがしばらく待っても噂話は止まず、むしろエスカレートする一方だった。

園子は思い切って、堂々と個室のドアを開ける。そして気づかず噂話を続ける女たちに向かって、スタスタと歩み寄ったのだ。


▶他にも:「私の仕事のこと、何も知らないくせに」毒親に初めて反抗した28歳女が迎えた、思わぬ展開

▶ Next:6月11日 金曜更新予定
異動先の雰囲気に、どんどん飲まれていく園子は…?

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この記事へのコメント

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No Name
めっちゃブサイクなのに加え、異動してきた日の初日挨拶で、「噂通り美人ぞろいでびっくりですぅ、私服地味過ぎで、あっ顔もか」
なんて突然自虐言うような子、普通いないから。
意味不明な態度が、自分で自分を生きにくくしているように思う。
2021/06/04 05:3199+Comment Icon16
No Name
華やかなクライアントが良いです!って笑
最後くだらない悪口言ってる所に出ていったのはかっこいいけど
大丈夫かなこの人って感じ😇
2021/06/04 05:0992Comment Icon7
No Name
何だか、すごくイライラする主人公の話がまた始まった。
2021/06/04 05:2365Comment Icon7
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vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~

美人か、そうでないか。

女の人生は“顔面偏差値”に大きく左右される。

…それなら、美しく生まれなかった場合は、一体どうすればよいのだろう。

来世に期待して、美人と比べられながら損する人生を送るしかないのか。

そこに、理不尽だらけの境遇に首をかしげる、ひとりの平凡な容姿の女がいた。

女は次第に「美人より、絶対に幸せになってやる!」と闘志を燃やしていく。

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