2021.06.04
vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~ Vol.1異動先として告げられたのは、誰もが知る大手化粧品メーカーをクライアントとする部署だった。
「わ、私が、あのクライアント…?なんでまた」
園子はたじろいた。というのもその部署は、化粧品という商材の特徴からか女性比率が8割以上。そして何より、美人ぞろいで有名なのだ。
― 私があんな部署にいったら、確実に浮きません?
そう言ってみようかと思っていたら、人事は頭を下げた。
「山科はガッツがあるから向いてると思うよ。よろしくな」
考えてみれば、そもそも「華やかなクライアント」という希望を出したのは自分なのだ。だから園子は、静かにうなずくしかなかった。
◆
園子は夕食をとりながら、その不安について両親に切り出した。
「あのね、ひとつ問題があるの。化粧品メーカーの担当になるんだけど、その部署が美人ぞろいで有名なの」
「それの何が問題なんだ?」
父親は園子の顔をまっすぐに見つめながら、かすかに首を傾げた。
「いや、だって。…私には似合わないと思わない?」
思わず笑いながら言った園子に、父は顔をしかめながら「どうしてだ?」と大真面目に聞く。
「だって私…」
― どっからどう見ても、美人じゃないじゃん?むしろ顔で損する方じゃん?
出かかった言葉を喉元で飲み込む。こういうことを言っても、両親がしょんぼりするだけだ。
「ほ、ほら…。私、派手な人と違ってお化粧とかあんまり興味ないしさ」
そうごまかすと、父親は満足そうに目を細めて言うのだった。
「まあ、園子は何もしなくても美人だからなあ」
このような褒め言葉は園子にとっては耳慣れたものだが、でも実は知っている。
― こんなふうに私の見た目を褒める人なんて、世界中探してもうちの両親くらいだわ。
小さい頃は両親の言葉を鵜呑みにして、本当に自分が「世界イチ可愛い」と思っていたし「男の人が放っておかないから注意しないとダメ」なのだと信じていた。
でも、中学に上がる頃にはもう気づいていた。
― 自分は可愛くなんかない。男の人が放っておかないような見た目じゃない。
…むしろ心配すべきは、男の人に一生放っておかれることだと思う。
「美人ぞろいの部署、か…」
夕食後。園子は歯磨きをしながら、ぼんやりと考えていた。
その部署には、100人いたら100人が漏れなく「美人だ」と断言するような人が集まっているのだろうか。
― 私なんて、100人いたら100人が「可愛くない」と断言するような顔なのに。
「…いや。100人いたら、1人くらいは可愛いって言ってくれるかもな」
鏡に映る顔を見て、頬を軽く叩いてみる。
― 明るく振る舞えば、まあなんとかなるかな!
園子は、ムリヤリ楽観的な思考に切り替えようとしてみた。
しかし翌朝、異動先のフロアに足を踏み入れた瞬間、“あること”を察してしまったのだ。
なんて突然自虐言うような子、普通いないから。
意味不明な態度が、自分で自分を生きにくくしているように思う。
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