vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~ Vol.1

vs.美女 ~広告代理店OLの挑戦~:「自分が可愛くないって知ってる」そんな女が屈辱を受けた、史上最低の出来事

異動先として告げられたのは、誰もが知る大手化粧品メーカーをクライアントとする部署だった。

「わ、私が、あのクライアント…?なんでまた」

園子はたじろいた。というのもその部署は、化粧品という商材の特徴からか女性比率が8割以上。そして何より、美人ぞろいで有名なのだ。

― 私があんな部署にいったら、確実に浮きません?

そう言ってみようかと思っていたら、人事は頭を下げた。

「山科はガッツがあるから向いてると思うよ。よろしくな」

考えてみれば、そもそも「華やかなクライアント」という希望を出したのは自分なのだ。だから園子は、静かにうなずくしかなかった。



園子は夕食をとりながら、その不安について両親に切り出した。

「あのね、ひとつ問題があるの。化粧品メーカーの担当になるんだけど、その部署が美人ぞろいで有名なの」

「それの何が問題なんだ?」

父親は園子の顔をまっすぐに見つめながら、かすかに首を傾げた。

「いや、だって。…私には似合わないと思わない?」

思わず笑いながら言った園子に、父は顔をしかめながら「どうしてだ?」と大真面目に聞く。

「だって私…」

― どっからどう見ても、美人じゃないじゃん?むしろ顔で損する方じゃん?

出かかった言葉を喉元で飲み込む。こういうことを言っても、両親がしょんぼりするだけだ。

「ほ、ほら…。私、派手な人と違ってお化粧とかあんまり興味ないしさ」

そうごまかすと、父親は満足そうに目を細めて言うのだった。

「まあ、園子は何もしなくても美人だからなあ」

このような褒め言葉は園子にとっては耳慣れたものだが、でも実は知っている。

― こんなふうに私の見た目を褒める人なんて、世界中探してもうちの両親くらいだわ。

小さい頃は両親の言葉を鵜呑みにして、本当に自分が「世界イチ可愛い」と思っていたし「男の人が放っておかないから注意しないとダメ」なのだと信じていた。

でも、中学に上がる頃にはもう気づいていた。

― 自分は可愛くなんかない。男の人が放っておかないような見た目じゃない。

…むしろ心配すべきは、男の人に一生放っておかれることだと思う。


「美人ぞろいの部署、か…」

夕食後。園子は歯磨きをしながら、ぼんやりと考えていた。

その部署には、100人いたら100人が漏れなく「美人だ」と断言するような人が集まっているのだろうか。

― 私なんて、100人いたら100人が「可愛くない」と断言するような顔なのに。 ......


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