2021.03.19
SPECIAL TALK Vol.78まだ見ぬものが好きな仲間と世界を変える挑戦を続ける
菱木:弊社は精力的に海外リサーチを行っていますが、中でも注目しているのがオランダです。というのも、人件費高騰などにより、アグリテックでの効率化が求められているからです。そこで昨年末、オランダに農業法人を作りました。オランダのトマト栽培は世界で最も進んでいるんです。オランダの国土面積は日本の9分の1ですが、トマトの生産量は日本の1.2倍です。
金丸:ヨーロッパ各国はEUとして統合されるなかで、「自分たちはなんで稼ぐのか」ということを本気で考えてきました。オランダはトマトの他に、パプリカの生産にも力を入れていますし、ノルウェーは漁業で世界の最先端をいっています。ITを活用し、漁師が直接魚に触れることなく、新鮮さを保ったままで海外に輸出しています。年収も高いし、ノルウェーの子どもたちにとって、漁師は憧れの職業のひとつなんですよ。
菱木:そうなんですか。日本では後継者不足で困っているのに。農業はイスラエルも進んでいますよね。国土の大半が砂漠地帯で、利用できる水の量も少ないため、水を効率的に使う技術が進んでいて、農業用水の80%を再利用しています。アメリカだと、広大な土地でどうやって効率よく生産するかが優先される。環境によって、期待されるテクノロジーにも違いが出てくるんだと感じます。
金丸:では、日本の環境を生かしたテクノロジーとはなんでしょうか?
菱木:世界を見渡しても、日本ほど少子高齢化と人口減少を体験している国はありません。だからこそ、人の代わりにロボットが活躍する余地がたくさんあると思います。
金丸:日本の農業の未来を考えると、私はロボットによって農作業の合理化ができても、大量生産による安売り路線では世界に勝てないと思っています。例えば非常に美味しいとか栄養価が高いとか、なんらかの強みのある農作物を、多少値が張ってもいいから欲しいという消費者に直接届ける。そんなモデルがいいのではないでしょうか。
菱木:そうですね。でも農業の現場は、データ活用が本当に遅れていて、ある地区の農家から1日にどれだけの出荷があるのかさえも農協は把握していません。そのデータがないものだから、量を確保するために、とにかく1ヶ所に集めるしかない。福岡の農家さんが福岡のJAに野菜を出荷して、それが東京の大田市場に行き、卸が買ってまた福岡に戻ってくるというようなことが、当たり前のように起こっています。
金丸:そういう非合理さを破壊できるのは、菱木さんのような外部からきた人だと確信しています。日本人って、多くの人が何かを始めたくても「知識と経験がないから始められない」と思い込んでいます。でも実際は、知識を身に付けてしまうと、その段階で業界の当たり前に染まってしまうんです。イノベーターを見ていると、たいていは知識も経験もお金もないまま始めていることが多い。それが、すごく重要だと思います。
菱木:今、僕は学生と話す機会も多いのですが、若ければ若いほど、社会的に意義のあることをやりたいという意欲が旺盛だな、と感じます。
金丸:その思いを忘れず、若い人にはどんどん挑戦してほしいですね。
菱木:ただ、やりたいことがある一方で、生活しなきゃいけないので「まず上場企業で働きます」という学生が多いし、「FXを勉強しています。自分のやりたいことをやるために、まずFXで稼ぎたい」という人もいます。
金丸:ちょっと健全じゃない感じがしますが。
菱木:自分が本当にやりたいことをやれている人は、日本には100人にひとりもいないかもしれません。だからこそ、最低限の生活を保障するベーシックインカムが実現したら、この状況が変わるのではないかと思っています。僕も死ぬほど貧乏だった時期があって、「貧すれば鈍する」ということを身をもって経験しているので。
金丸:毎月一定額をもらえたら、生活の心配がない分、自分のやりたいことに打ち込む人が増える可能性がありますね。ところで会社の仲間はどうですか?
菱木:inahoはまだ20人程度の規模ですが、ユニークな経歴の持ち主が多くて、楽しいですよ。うちのトップエンジニアは、ブリティッシュコロンビア大学院でニュートリノの研究をしていました。世の中の誰もやったことがないことにチャレンジしているので、そんな挑戦好きなタイプが集まってくるんじゃないかと思います。
金丸:多様なバックグラウンドを持った仲間が集まって、農業を切り口に本当にやりたいことに打ち込める場をつくる。素晴らしいじゃないですか。菱木さんが日本の農業の未来を変えてくれることを期待しています。今日は本当にありがとうございました。
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