2021.03.19
SPECIAL TALK Vol.78「やりたいことがない」。劣等感を抱えながらもがく
金丸:どうして大学を辞めようと?
菱木:それが単純な話なんですが、アメリカで友人に料理を作って振る舞ったら、すごく感謝されたんですよ。高校生まで実家だったので、自分で料理をする機会なんてほとんどないじゃないですか。それなのに、煮物とか簡単な料理を出すと喜んでくれたので、「自分にも人に喜ばれることができるんだ」と驚いたというか。「だったら、料理を勉強したい」と、調理師学校に通うことにしました。
金丸:大学に行ってる場合じゃないと。そう思っても、なかなか行動に移せない人が大半ですが、菱木さんは何かしら自分に自信があったんですか?
菱木:自信は……。自信がない、ということはなかったですね。ただ、「自分はこれからいったいどうなるんだろう」という不安は強かったです。でも「今が一番楽しいから、就職なんてしたくない」という気持ちもありました。
金丸:でも、大学を退学して調理師学校に通うということは、料理を仕事にしようという意志があるわけですよね。
菱木:今思うと、すがるような気持ちだったのかもしれません。高校を卒業した後、何をしていいか分からない自分と比べて、専門学校に行く同級生たちが正直うらやましかったんですよ。僕は何もしないわけにもいかないから「大学にでも行くか」という感じだけど、彼らはやりたいことがあって、それを学ぶために専門学校を選んでいるので。
金丸:なるほど。では調理師免許を取った後は、どう過ごされたのですか?
菱木:ホテルのキッチンでアルバイトをしたのですが、「これは自分には無理だな」と思ったんです。例えばパーティー向けのスープは、冷凍してある材料を大きな寸胴に入れて、温めたら出来上がりです。料理というより「完全に作業だな」と感じたし、そこで働いているシェフたちがあまり楽しそうじゃなかったので、この作業を一生続けるのは嫌だなと。今だったら、他にできることや工夫することがあったのではないかと思えますが、当時はそこまで考えられず。
金丸:調理師学校を卒業して、でも食のビジネスには入らず。まだまだ農業ロボットにはつながりませんね。
菱木:まだまだです(笑)。当時、同い年の彼女と付き合っていたのですが、彼女はすでに働いていたので、「フリーターになるんだったら別れる」と言われて。
金丸:冷静ですね(笑)。
菱木:そうなんですよ。調理師には向いてないと分かったけど、どこかに就職しないとまずい。そこで専門学校の5、6歳年上の人たちに相談したら、「不動産とかいいんじゃない?お金稼げるし」とアドバイスをもらいました。「そうなんだ」と思って、高卒でも雇ってくれる会社を探し、不動産コンサルタントとして働くことにしました。
金丸:菱木さんの人生、面白いですね。ものすごい勢いであちこちに寄り道しながら。
菱木:不動産業界に転職したのは本当にたまたまなんですが、結果的にすごく良かったですね。上場企業の部長クラスの方を相手に、2億や3億の投資をしていただくという仕事でしたが、額が額なので、お客様の人生を背負っていると感じながらやっていました。その時のお客様で、今、うちの株主になっていただいている方もいます。
金丸:今もつながりがあるということは、大損させた人はいなかったわけだ(笑)。不動産コンサルは、どれくらいの期間されていたのですか?
菱木:サラリーマンとしては4年半くらいです。その後、独立したのですが、不思議なことに全然面白くないんですよ。会社で働いていた頃と違って、ひとりで仕事をするのって、こんなに楽しくないし、うれしくないんだと衝撃を受けました。ただ、これが分かったのは、人生において非常に大きいことでしたね。
震災ボランティアで知る、仲間とやり遂げる価値
菱木:僕にとって次の転機は、2011年の東日本大震災でした。たくさんの方が甚大な被害を受けているのに、僕にできることは募金するぐらい。自分が無力であることにフラストレーションを感じていました。
金丸:ボランティアには行かなかったんですか?
菱木:行きました。ただ最初は、ボランティアに抵抗があったんです。それまでしたことがなかったし、なんとなく高貴な人がするイメージを抱いていて。でも、その年の11月に友人から「石巻に行ってみない?」と誘われて。
金丸:現地では、何をされたんですか?
菱木:被災した家屋の片づけです。最初に訪ねたのは、60歳くらいのご夫婦が住んでいる一戸建てでした。15人くらいで2日間かけて、その家から土のう200袋分のがれきを運び出しました。
金丸:大仕事ですね。
菱木:でもやりがいはありました。夜はテントを張って、みんなで語り合って。
金丸:高貴な人がするというイメージが覆された。
菱木:はい。さらにすごい不思議だったのが、ボランティアのみんなが「ありがとう」って、被災した家の方たちに言うんです。僕も自然と「ありがとう」と言っていて。それ以降、毎月行くようになりました。そして、ボランティアの数が全然足りないことが分かり、どうしたらもっと人を呼べるだろうと考えるようになりました。
金丸:菱木さん自身も最初は敬遠していたわけだから、何かきっかけさえあれば、と思いますよね。
菱木:そうなんです。逆に「今、どういう人たちが来てるのかな」と周りを見てみると、例えば遠方まで行くのに慣れている人、テントで過ごすのに慣れている人、バーベキューが楽しめる人。「あれ?これってフジロックに行く人と層がかぶっているんじゃないか」と気づいて。
金丸:フェス好きはボランティア好きですか。面白い。
菱木:僕自身フェスが好きだし、フェス好きの友達を誘って連れて行くと、「また行きたい」って言うんですよ。だからボランティアに参加すると、入場無料になるフェスを企画したら、たくさんの人が来てくれるんじゃないかと思いました。
金丸:でも、菱木さんはそういうイベントを企画したことは?
菱木:1回もないです。
金丸:それでもやってみた。すごいですね。実際にどうでした?
菱木:運営のボランティアスタッフだけで、140〜150人くらい集まりました。何よりも「みんなで何かをする」ことの面白さを再確認しましたね。だから、仕事もひとりでやるのではなく、自分で事業を起こして、みんなで同じ目標に向かって取り組むというかたちが僕には合っているし、やっていきたいと強く思うようになりました。
金丸:今のフェスの話も、他に思いついた人はいたかもしれません。でも、アイデアだけで終わるのではなく、実行してこそ価値があります。
菱木:思いついて、本気でやりたいなと思ったら、それをなんとしてでもやろうとする。ある意味、わがままな部分が僕にはあるのかもしれませんね。
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