2021.01.11
やまとなでし男 Vol.14「金で買えないものはない」
愛だって女だって、お金さえあれば何でも手に入る。男の価値は、経済力一択。
外資系コンサルティング会社に入った瞬間、不遇の学生時代には想像もつかなかったくらいモテ始めた憲明、34歳。
豪華でキラキラしたモノを贈っておけば、女なんて楽勝。
そんな彼の価値観を、一人の女が、狂わせていくー。
「やまとなでし男」一挙に全話おさらい!
第1話:運命の女は、金で買う。プロポーズに250万つぎ込んだ男が見た地獄
やっぱりお金ってすごい。連絡先を交換した2人は、その日以来頻繁に連絡を取り合うようになった。
てっきり、新卒で入社した美人ぞろいで有名な損保会社で働いているとばかり思っていたが、聞けば3年前に銀座のギャラリーに転職したのだという。
彼女は、どうしても夢が諦めきれず、安定した生活を捨ててアート業界に入ったのだと、生き生きと話してくれた。
美しく華があり、仕事をひたむきに頑張る芯のある麻子は、憲明の自慢の恋人だ。そんな最高の彼女には、とっておきのサプライズで喜ばせたい。憲明のプロポーズへの力の入り方は、並々ならぬものだった。
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第2話:プロポーズを断られ、250万をドブに捨てた男。自暴自棄な彼を襲うさらなる悲劇
帝国ホテルのスイートルーム。部屋に入った憲明の目に飛び込んで来たのは、100本の真っ赤なバラの花束だった。
予定では、人生で一番ロマンチックな夜になるはずだった今夜。麻子のために準備しておいたが、今となっては無用の長物だ。
憲明は、慌ててゴミ箱に花束を投げ入れるが、100本の花束は想像以上に重く、大きい。
当然ゴミ箱に収まりきらず、鉢植えのように綺麗に飾られる形となった。
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第3話:赤坂在住、年収3,000万の彼氏を振った女。男が予想だにしなかった、衝撃の本音
「俺が聞きたいのは、なんでプロポーズを断ったのか、それだけなんだよ!」
憲明は、怒りに任せて声のボリュームをグッと上げる。すると麻子が、ジッとこちらを見つめて聞いてきた。
「どうして私と結婚しようと思ったの?」
「好きだからに決まってるだろ。そうじゃなかったら、250万もかけてプロポーズしない」
予期せぬカウンターパンチに驚いたが、なんとかうまくかわせた…と、思った次の瞬間。
「憲明は、私のこと何も分かってない」
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第4話:美女に骨抜きにされた、傷心の男。彼女のあざとすぎるメロメロ術
聞かれるがまま、憲明は連絡先を教える。候補は、1人でも多い方が良い。美女達の熱い視線を受けながら、心の中で「麻子、ざまあみろ。こんな人気のある男を振るなんて、御愁傷様」と、呟く。
こんなに需要があるなんて、俺も捨てたものではない。プロポーズを断られて傷ついていたプライドが徐々に回復していく。
−麻子の代わりなんかいくらでも見つかるんだ。
シャンパングラス片手に、憲明が誰を食事に誘おうか考えていると、自分の名前を可愛らしく呼ぶ声が聞こえてきた。
「のーりーあーきーさんっ!」
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第5話:新たな彼女候補もいるのに。気づけば元カノのことばかり考えてしまう、男の脆い心
“憲明さんに会えるのが楽しみで、うずうずしています♡”
スマホの画面に表示されたメッセージに、憲明は頰を緩ませた。はるかの愛らしい姿を思い浮かべると、つい「かわいいな…」と、心の声が漏れてしまう。
今日はこれから、はるかとのディナーだ。逸る気持ちをグッと堪えながら、急いで出かける準備に取り掛かる。
いつもより丁寧に髭を剃りながら、憲明は、ふと麻子のことを思い出した。
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第6話:「彼女が、銀座で…?」こじらせエリート男子を振った、元カノの秘密と本音
−あ、麻子…!?
バーを後にし、再び歩き出した吉野は、中央通りから一本細い道に入ったところで、思わず立ち止まった。前から歩いてくるのは、憲明の元カノ・麻子ではないか。咄嗟に、近くのビルの物陰に隠れる。
彼女とは、大学のサークルが一緒で、ただの先輩と後輩の間柄だ。隠れる必要などどこにもないのだが、憲明の話を聞いていたこともあり、何となく気まずい。
こっそり顔を出して様子を窺うと、麻子は道路の反対側のビルに入っていった。
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第7話:デートに向かう途中、元カノに再会した男。彼女に迫られた男の、最低な裏切り
ディナーに向かおうとタクシーを探すが、休日の銀座中央通りは歩行者天国だ。タクシーを拾うために外堀通りに移動する。細い道に入ると、憲明の胸が急にザワザワし始めた。
−そういえば…。
この辺りに麻子の職場があったことを思い出したのだ。
なんだか落ち着かなくて、一気に歩くスピードを上げる。万が一のことがあったら大変だ。逃げるように外堀通りに到達したところで、目の前に一台のタクシーが止まった。
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第8話:「私と付き合うなら…」交際を申し込んだ男に突き付けられた、美女の高すぎる要求
「こちらでよろしいですか」
運転手に声を掛けられハッと外に目をやると、目的地の前に到着していた。
タクシーを降りた憲明は、マンションの外からはるかに電話をかける。事前にメッセージも送っておいたが、それでも応答はない。
スマホを握り締めながら、寒空の下辛抱強く待つ。だが、30分もすれば体の芯が冷えて背中もゾクゾクし始めた。その時だった。
青白い顔をしたはるかが、フラフラとした足取りで出てきたのだ。
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第9話:付き合って1か月で、結婚を急ぐ女。男が逃げようとしている時に使う、“常套句”
朝から頑張ってくれたお礼に外に食べに行こうと誘うと、はるかは「デートだあ」と、嬉しそうに準備を始める。
手をつないでゆっくり外を歩きながら、憲明は2人の未来を想像した。おじいちゃんおばあちゃんになっても、こうして散歩していたいなと、ふと思った。
ランチに入った店の人気メニュー、ブロッコリーチーズバーガーにかぶりつき、昼からビールで乾杯する。幸せな昼下がりだ。食べ終わる頃、はるかがこう切り出した。
「ねえ、少し早いかもしれないけど両親に会ってくれない?」
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第10話:弱った元カノを前に、理性を抑えきれなかった男。彼が犯してしまったタブー
彼女はもう他人なのだから、送別会に行っても問題ないだろう。
だが、心のどこかで不安があったのだ。麻子に会ったら言いたいことも言えなくなって、自分の気持ちが揺れ動くのではないか。彼女を想うほんの少しの気持ちが、まだ残っているからゆえだった。
返信を放置していると、吉野から再度連絡が入った。
『行かないってことで良いよな。このご時世、飛び入り参加とか店側も困るだろうし』
そのメッセージに、気づけば、こう返していた。
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第11話:元カノを抱きしめたジャケットで帰宅した男。迂闊な男を待ち受けていた修羅場
「結局ヨリを戻すみたい。人を呼び寄せておいて、本当に迷惑な話よね。あ、コート預かるよ」
手を伸ばしてきたはるかにコートを預けると、彼女はそのままブラッシングを始めた。
だが、すぐにその手を止め、憲明をじっと見つめた。
「憲明さんの匂い、いつもと違う。これ、女物だよね?」
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第12話:元彼の優しさに甘えたくなった女。思わずかけた電話に出たのはまさかの…
「僕たちが扱っているのは、アートだ。心の余裕をなくしてはいけないよ」
彼は常々、そう言っている。そうは分かっていても、気づけば目の前の仕事に追われて忙しなくしてしまう毎日。この部屋に来ると、そんな自分を反省するのだ。
「それで…」
ティーカップを置いた代表は、ゆっくりと口を開いた。
「私も色々と考えたんだ。パリのギャラリーと、一度話してみたらどうだろうか?」
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第13話:自分勝手な女が選ばれて、献身的な女が泣きを見る。万年二番手の女が絶望した夜
元カノになかったものを彼に提供してあげよう。そうすればきっと、私に夢中になる。そう思って振舞ってきたというのに。
だが、最終的に彼が選んだのは元カノ。プロポーズを断って仕事を選んだ女だ。悔しさで再び涙が溢れてくる。
身勝手でわがままな女が選ばれて、献身的に尽くして来た女が泣きを見る不条理な世の中が、心底嫌になる。
でも、いつまでも二番手の女に甘んじているわけにはいかない。今回で最後にする。そう決心したはるかは、最後に憲明に質問することにした。元カノと自分の違い。馬鹿正直な彼ならきっと答えてくれるだろう。
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