「金で買えないものはない」
愛だって女だって、お金さえあれば何でも手に入る。男の価値は、経済力一択。
外資系コンサルティング会社に入った瞬間、不遇の学生時代には想像もつかなかったくらいモテ始めた憲明、34歳。
豪華でキラキラしたモノを贈っておけば、女なんて楽勝。
そんな彼の価値観を、一人の女が、狂わせていくー。
−8号…?いや、9号か?
憲明は、隣で気持ちよさそうに寝ている麻子の左手薬指を食い入るように見つめていた。
日曜日の朝7時。
普段ならまだ寝ている時間だが、今日の憲明には大事なミッションがあった。
1ヶ月後に迫った、付き合って1年の記念日。そこでプロポーズする予定だが、一生の思い出となるように、とびきりのサプライズを計画している。
豪華クルージングの最後、大きなダイヤの付いた指輪を贈りたいのだ。
購入しておいたリングゲージを取り出して、遠目からサイズを確認する。悪戦苦闘していると、予期せぬ事態が発生した。
「うーん」
麻子が寝返りを打ったのだ。
最悪だ。肝心の左手が、反対側を向いてしまったではないか。
そーっと反対側に回り、再びサイズ確認を試みるが、ベッドの上で足をすくわれ、バランスを崩してしまった。
“ガシャーン”
床に勢い良くリングゲージが落ちてしまった。
「もう。朝から、一体何の音?」
眠そうに目をこすりながら、麻子がベッドから起き上がる。
−やばい…!
憲明は、リングゲージを掴んで寝室を飛び出した。
この記事へのコメント
一人よがりな演出を、周りにペラペラ話して、アホか。
お金に物言わせてるのもあるのかもしれないけど、結構自分の基準で準備とかしてるよね、ノリアキ。
なんか彼女振り回してそう。