2020.10.13
やまとなでし男 Vol.1まさかの返事
「緊張するなあ」
プロポーズ当日。憲明は、いつもより早く目が覚めた。
いよいよ決戦の日。クルージング、スイートルームにキラキラの婚約指輪。
この1ヶ月準備を重ねてきた。
これ以上何がある?という豪華な演出だ。麻子を喜ばせる自信しかないが、いざ当日を迎えると、得体の知れない不安が憲明を襲ったのだ。
−いやいや。絶対大丈夫だって。
自分に言い聞かせながら、憲明は仕事の準備に取り掛かった。
“麻子、大丈夫?”
18時35分。
憲明は焦っていた。待ち合わせ時刻を過ぎているのに、麻子は現れないどころか連絡がつかないのだ。
クルーズ船の出航は、19時。ギリギリまで乗船可能とのことだが、この状況では間に合うのかということすら分からない。
まさか、ドタキャンだろうか。
憲明の脳裏に、ネガテイブなことが浮かんでいく。万一彼女が来ないなんてことがあったら、プロポーズは台無しだ。
どうしたら良いか分からず入口で立ち尽くしていると、スマホが鳴った。
「憲明、ごめんね。仕事が長引いちゃって。今出たから、あと10分くらいだと思う」
麻子の声に、ホッと心をなでおろす。ギリギリだが、出航時刻には間に合いそうだ。まったく、不安にさせないでくれよ。
彼女の到着を待ちながら、憲明はカバンの中の婚約指輪を確認する。
−デザートが終わった後、プライベートデッキに出て夜風にあたりながらプロポーズ…。
セリフは、ストレートに“結婚してください”…。
そんなイメージトレーニングをしていると、タクシーが目の前で止まった。
「ごめんね、憲明」
麻子が申し訳なさそうな顔で降りてきた。憲明は、その姿に目を奪われる。
ネイビーのワンピースに身を包んだ彼女の姿は神々しいほどに美しい。
憲明は、麻子の手を引いてクルージング船へと向かった。
「とっても素敵!本当にありがとう」
2人だけのために用意された貴賓室で、麻子はまず、憲明に感謝の気持ちを口にした。
彼女が喜ぶ姿に、憲明の頰も緩む。だが、気を抜いてはいけない。ここからが本番なのだ。
刻一刻とその時が近づく。憲明の心拍数も、徐々にドキドキ上がっていく。
メインの和牛が提供された時には、緊張はピークに達していて、せっかくの料理を前に、食欲も湧かないほどだった。
「ごちそうさまでした。とっても美味しかった」
全ての食事が提供され、茶菓子をつまみながらコーヒーを飲んでいた時。ついに憲明は動いた。
「ちょっと夜風にでもあたろうか」
柄にもないセリフで、麻子をデッキに誘い出す。
「なに、酔っちゃった?大丈夫?」
憎たらしくも、麻子は何も勘付いていないらしく、お水を差し出してくる始末だ。
「せっかく外に出られるんだし。夜景見ようよ」
なんとかデッキに麻子を連れ出すことに成功した憲明は、「ちょっと待ってて」と、指輪を取りに船内へと戻った。
「麻子」
うっとりと夜景を見つめる麻子の背後から近づき、声をかけた。
「なぁに?」
振り向いた彼女の前で、憲明は跪いた。そして婚約指輪の箱をパカっと開ける。
「僕と結婚してください」
「え…」
突然の出来事に驚いたのだろうか。麻子は小さな声で「どうしよう…」と呟き、少し苦しそうな表情を浮かべた。
「もう一回言う。僕と結婚してください」
早く彼女の薬指にこの指輪をはめたい。逸る気持ちを堪えて待っていた憲明だったが、彼女の返事は想像を絶するものだった。
「ごめんなさい。私、結婚出来ません」
▶他にも:「夫のことが、マジで嫌いになりそう…」妻が我慢の限界を感じた、夫のありえない行動
▶︎Next:10月20日 火曜公開予定
総額250万のプロポーズ大作戦が失敗に終わった憲明。どん底に突き落とされた彼が向かったのは…?
お金に物言わせてるのもあるのかもしれないけど、結構自分の基準で準備とかしてるよね、ノリアキ。
なんか彼女振り回してそう。
【やまとなでし男】の記事一覧
2021.01.12
Vol.15
指輪や花束に頼らない。男が身一つで挑むプロポーズに唯一持ち合わせていたもの
2021.01.11
Vol.14
超面倒な拗らせ男は真実の愛を見つけられるか?「やまとなでし男」全話総集編
2021.01.05
Vol.13
自分勝手な女が選ばれて、献身的な女が泣きを見る。万年二番手の女が絶望した夜
2020.12.29
Vol.12
元彼の優しさに甘えたくなった女。思わずかけた電話に出たのはまさかの…
2020.12.22
Vol.11
元カノを抱きしめたジャケットで帰宅した男。迂闊な男を待ち受けていた修羅場
2020.12.15
Vol.10
弱った元カノを前に、理性を抑えきれなかった男。彼が犯してしまったタブー
2020.12.08
Vol.9
付き合って1か月で、結婚を急ぐ女。男が逃げようとしている時に使う、“常套句”
2020.12.01
Vol.8
「私と付き合うなら…」交際を申し込んだ男に突き付けられた、美女の高すぎる要求
2020.11.24
Vol.7
デートに向かう途中、元カノに再会した男。彼女に迫られた男の、最低な裏切り
2020.11.17
Vol.6
「彼女が、銀座で…?」こじらせエリート男子を振った、元カノの秘密と本音
おすすめ記事
2021.10.27
ニューノーマルな男と女
ニューノーマルな男と女:同期女性に絶賛片思い中の男。出社制限で会えない間、彼女はまさかの行動に…
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2024.11.16
男と女の答えあわせ【Q】
初めてお泊まりした翌日から、急に彼から連絡が来なくなった…。これって、遊ばれた?
2018.02.17
新婚クライシス
夫婦は結局“合わせ鏡”。離婚寸前まで崩壊した夫婦を救った、ある歴史的モテ男の名言
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
2017.06.25
エーデルワイフ
エーデルワイフ:絵に描いたように幸せな生活を送る新妻の、不穏な涙
2016.11.16
執行役員リサとマリコ
いよいよ明日で最終話!「執行役員リサとマリコ」全話総集編
2016.03.31
その名は、サエコ。 #東京悪女伝説
その名はサエコ:身体を許してしまった夜。「バカな女」と笑うことなど誰にもできない。
2019.02.09
Who?
隠していたトラウマを突かれ、女の甘言に堕ちた男。こうして夢見た青年は、地獄の扉をノックする
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
この記事へのコメント