モラトリアムの女たち Vol.8

意味深な連絡をしてきた女と、突然音信不通に…。数日後、見かけた姿に感じた異変

何不自由ない生活なのに、なぜか満たされない。

湾岸エリアのタワマンで、優しい夫とかわいらしい娘に囲まれ、専業主婦として生きる女。

ーあのときキャリアを捨てたのは、間違いだった?

“ママ”として生きることを決意したはずの“元・バリキャリ女”は、迷い、何を選択する?

◆これまでのあらすじ

湾岸のマンションで専業主婦として育児に専念する、元バリキャリ女子の未希。

復職への想いを再燃させていたが、ママ友の華子が仕事先で疎まれていることを知ってしまい、複雑な感情を抱くのだった。

▶前回:娘を実家に預け、男と会っていたことがバレた妻。言い訳する女に夫がかけた言葉とは


「目標、というか、希望が無くなっちゃって」

マンションへの帰り道。未希はベビーカーを押しながら、街で偶然会った前職の後輩たちの言葉を噛みしめていた。

出産前、未希が“鉄の女”と言われるほど仕事に精を出していた理由は、ひとつではない。しかし、そのほとんどは「自分の力を試したい」というような自分本位の理由だった。

―いつの間にか、私は希望になっていたんだ…。

感情に流され会社を退職してしまったことの重さを、未希は改めて感じたのだった。

「未希さん!」

そんなことを考えていると、どこからか誰かが未希を呼ぶ声に気付いた。

「まりあさん…」

声の方を見ると、まりあがいた。彼女はどこかに遠出するかのような、たくさんの荷物を持って立っている。

「LINE、返せなくてごめんなさい」

「いいの。私も返事を催促して、ごめんね」

まりあはどこかやつれた様子で、すぐに彼女だと認識するのに時間がかかった。その時のまりあはどこか光を失い、影さえも帯びているような雰囲気だったからだ。

未希はその様子に、ただ事ではない雰囲気を察する。それに一番の異変は、彼女が息子・ふう君を連れていないことだった。

「ねえ、ふう君はどうしたの?」

「実は…」

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