—“何者か”になりたい。
東京で生きながら、漠然とそう願ったことはないだろうか。
田園調布で生まれ、私立一貫校で育った裕太(34)、同じく目黒出身の修二(34)。そして丸の内OLの優子(30)と、生粋のお嬢様である麗華(31)。
そんな4人がいつも集うのは、とびきりの雰囲気の中でお酒や料理が堪能できる、東京のどこかのテラス席。
複雑に関係が絡み合う、“テラス族”の男女4人。今ここに、熱くて切ないラブストーリーが始まるー。
「東京テラス族」一挙に全話おさらい!
第1話:生まれながらの格差に、抗えない…。30歳の丸の内OLが友人に劣等感を抱く理由
仕事も楽しいし、こうして大好きな仲間たちもいる。東京のキラキラを寄せ集めたような生活もできている。でも30歳になっても独身で、不安がないといえば嘘になる。
そして何よりも、漠然と“もう少し上に行きたい”と思っていたから。
「今年の夏を、最高のものにしようぜ」
裕太がそう言って、修二、麗華、私。みんなで思わず顔を見合わせた。
けれどもこの言葉どおり、今年の夏は4人それぞれにとって、一生忘れられないものになったのだー。
第1話の続きはこちら
第2話:「う、嘘だろ…!?」34歳の男がずっと憧れていた美女の、衝撃のヒミツとは
楽しそうに腕を絡めるカップルなどを横目に、駐車場へ入れようと青学の前を右折した途端、不意に昔の彼女に言われた言葉を思い出した。
「裕太くんって、狭い世界で生きているよね」
それは、自分でも分かっている。ずっと、この界隈で育ってきた。それが自分の武器でもあり、他へ行きたいとも思わない。けれども34歳になり、これでいいのかという葛藤も生まれている。
ここから抜け出す方法も知らなければ、もっと上へ行く方法も分からない。そんな僕は、この大都会・東京でもがいているのかもしれない。
第2話の続きはこちら
第3話:最初は、そんなつもりじゃなかった…。30歳の女が、14歳年上の男にハマった理由
「幼馴染の車を見た気がして…ごめん」
「そっか。それは気をつけないとな」
そう言って、また距離をとって車まで歩き始めた晃弘。どこかホッとしつつ、寂しい気持ちにもなる。
私たちの関係は、誰にも知られてはいけないし、見られてもいけない。
なぜなら彼は、私より14歳も年上。そして何より、彼は既婚者だから。
第3話の続きはこちら
第4話:「こんなカンタンに、成り行きでいいの…?」男から誘われた女が取った行動
せっかく大好きな裕太と葉山までドライブだというのに、空は生憎の曇天だ。
「ハァ…」
思わずため息が漏れた。どうせ裕太は、私のことなんてただの友達としてしか見ていない。その事実が悲しくて、窓からどんよりとした空を見上げる。
しかしこの時の私は、全く予想していなかった。この葉山がとても長い1日となり、そして私たち二人の関係が一気に進むということをー。
第4話の続きはこちら
第5話:平凡な女と思っていたのに、あの夏の夜が忘れられない…。恋と友情のあいだで揺れる男心
僕が最も違和感を抱いたのは麗華だった。今日この店に来てからあまり話していないし、ずっと裕太と優子を交互に見ているのだ。いつもの麗華なら、ふわっとしていながらどこか堂々としているのに、何かが違う。
「麗華は?なんか変わったことあった?」
「べ、別に何もないけど?」
どうやら、僕の知らないところでそれぞれの夏は動き始めていたらしい。
第5話の続きはこちら
第6話:ずっと憧れていた女から告白されたのに。男が素直に喜べなかった、夜の出来事
今日は、久しぶりに4人での遠出だ。しかも泊まりで、軽井沢。この企画が決まってから私は楽しみで仕方なく、そして裕太と一緒の旅行に心躍っていたことは言うまでもない。
前回葉山へ行き、裕太と夜を共にした。しかしそれ以降何の進展もなく、正直あの一夜は幻だったのか、もしくは裕太のただの遊び相手になったのか分からずにいた。
—今回こそ、ちゃんと答えを聞こう…
そう決めていた。けれども、この軽井沢旅行で皆の想いが、更に交錯していくことになるのだった。
第6話の続きはこちら
第7話:「誰かに自慢できるような旦那さえいれば…」同級生の集いに顔を出す、30歳女のもくろみ
「あ。そういえば来週、麗華の誕生日だったな」
来週金曜は、優子が企画した麗華の誕生日会がある。もちろん全員呼ばれているのだが、この雰囲気で一体どうするつもりなのだろうか。
「そうか…そうだったね」
バックミラー越しに、麗華が弱々しく微笑む。その隣でむすっとしている優子。そんな彼女たちを見ながら、僕は僕で昨晩の出来事を思い出す。そして小さくため息をついた。
第7話の続きはこちら
第8話:「恥ずかしくて、絶対誰にも言えない・・・」豪遊していた34歳の男に、突然訪れたピンチ
今でこそ、親が住む田園調布を離れて青山で一人暮らしをしているものの、家族の時間は大切にしていた。
だから毎週末、時間が合えば実家に帰っていたし、そこでご飯も食べていた。それが当たり前だと思っていたし、何の疑問も抱いていなかった。
だが外部の人達と触れ合い、それが普通ではないと気がついたのは、大人になってからのこと。そんな僕が今、親から衝撃的な事実を聞かされている。
「会社を、畳もうと思う」
第8話の続きはこちら
第9話:「おじさんの相手するのに飽きた?」歳の差恋愛をしていた女が、友人から罵倒された出来事
裕太から断られるなんて、初めてだった。モヤモヤした気持ちを抱えると同時に、僅かな不安がよぎる。
“どうかしたのかな?”それくらいに捉えていたところ、優子からLINEが入った。
—優子:麗華、来週土曜のお昼空いてる?ランチでもしない?二人きりで。
こちらも、妙な胸騒ぎがする。優子と二人でランチなんて、いつぶりだろうか。けれども断る理由もなくて、私は土曜のお昼、優子が待つお店へと向かったのだ。
第9話の続きはこちら
第10話:落とせそうな女か、手に入らぬ高嶺の花か。二人の女から同時に来た電話、男が取ったのはどっち?
「もしもし裕太?私だけど。朝早くからごめんね…今、お家の下にいるんだけど、どこか近くでブランチでもどうかなと思って」
何故だろうか。電話越しでその声を聞いた途端、とてつもなくホッとした。
そしてここ数週間張り詰めていた緊張が少しだけ解け、肩に重過ぎるくらいにのし掛かっていた何かが外れたような感覚だった。
「…心配してくれてありがとう。10分で用意するから、ちょっと待ってて」
第10話の続きはこちら