心の安らぎのため、人は愛を求める。
しかし、いびつな愛には…対価が必要なのだ。
愛して。どこへも行かないで。私が、守ってあげるから。
これは、働かない男に心を奪われてしまった、1人の女の物語。
「ひも結び」一挙に全話おさらい!
第1話:やしなう、幸せ。31歳・東大卒のキャリアウーマンを自宅で待ち受ける存在とは
「品種は何なんでしたっけ?」
「え?品種…?」
2杯のスパークリングワインで回転がゆるんだ望美の頭は、突然投げかけられた言葉の意味を理解することができなかった。怪訝な顔で固まる望美の顔を見て、質問をしてきた部署の後輩・凛が笑う。
「やだなぁ、川辺さんったら。川辺さんが飼ってる猫ちゃんの話ですよ。たしか、ヒデちゃんでしたよね?私も実家にフクちゃんっていう子がいるんで、猫大好きなんです」
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第2話:ダメ男にお小遣いを与え続けるアラサー女子。働かない男に対しての本心は
「うう…ん、もうそんな時間…?」
土曜日の午前10時半。とてつもなく朝に弱い望美は、休日となれば何時まででも眠れてしまう。ヒデの呼びかけに、まるで寝言の延長のような生返事をすると、望美は再び夢の世界へと戻るために布団の中に潜り直した。
だが、望美が眠りに落ちていくことを禁じるように、ふいにダブルベッドの端がギシリと軋む。ヒデが腰かけたのだ。ウトウトとする望美の、枕の上で乱れた髪が、長く細い指によって緩やかに解きほぐされる。
「まったく、望美さんはしょうがないなぁ…」
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第3話:「君なら理解してくれると思ってた」2年半付き合った彼氏に突きつけられた、無理難題
「望美はもっと、先進的な考えの女性かと思ってた」
それが2年前、上岡と別れる時に言われたセリフだ。
上岡が望美の勤めるIT企業に転職してきて以来、2年半の付き合い。望美は29歳。上岡は42歳。望美が上岡に対して言った「結婚のこと、どう考えてる?」という質問は、ごく当たり前のもののはずだった。
だが、上岡がキョトンとした顔で告げた事実に、望美は愕然とする。
「あれ…言ってなかったっけ。僕、レベッカと書類上は婚姻関係だよ。結婚してる」
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第4話:「彼が無職だなんて、誰にも言えない」プライド高め女子を襲う、絶体絶命の危機
紹介された佐藤という男性は、言われてみれば確かに同じフロアでよく見かける社員の1人だ。望美は、目の前の幸せそうな2人に当たり障りのない笑顔を向けると「もちろん、誰にも言わない」と答える。
だが笑顔の裏で、望美の心中は決して穏やかではなかった。佐藤と楽しそうにじゃれあう凛の視線が、終始、望美の隣にいるヒデに注がれ続けていることに気づいていたからだ。
そしてついに、好奇心を抑えきれない様子で凛が口を開く。
「あのぉ、もしかして、川辺さんも彼氏いたってことですか?そちらのイケメンさんって、彼氏さん…ですよね?!」
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第5話:「こんな人と結婚するなんて思わなかった」本音を聞かされた、31歳女の苦悩
―いったい、結婚の何がいいの?どれほど約束を交わしたって、互いの心は縛れない。上岡さんだってそう言っていたのに…。
心の中で訝しむ望美と、瞳をキラキラと輝かせる凛。そんな2人の観客に対し、鈴木はしばらく中空を見つめて考え込んでいたかと思うと、ふっと目を細めた。
そして、花が咲いたような美しい笑顔で、つぶやくように答える。
「うーん…。この人を、ずっと私が守ってあげたい、って、思ったからかなぁ…」
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第6話:「どうしてそんなこと、今さら…」女を男性不信にさせた元彼が放った、衝撃の一言
上岡は何も言わない望美をよそに、淡々とした様子でウエイターを呼び止めると、離婚を告げたのと全く変わらない言い方で一言、「ミモザ」とオーダーをする。
望美がもっとも好むカクテル。そして、もう一度ウイスキーのグラスに口をつけると、繰り返して言った。
「離婚したよ」
「…だから何?」
そう小さな声で絞り出すのが、望美の精一杯だった。
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第7話:「何人、都合のいい女がいるの!?」激昂する孤独な女に、男が明かした予想外の真実
「何も言わずに、LINEも返さずに…どこに行ってたの…!?」
ようやく絞り出した声は、怒りのあまり語尾が震えている。
望美の詰問を浴びせられたヒデは、覗き込んでいた冷蔵庫のドアをゆっくりと閉めると、こちらに向き直って口を開いた。
「望美さん、ごめん。実は俺…」
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第8話:「彼だけは…絶対に譲らない」嫉妬に駆られる女が探し当てた、インスタに残る動かぬ証拠
突然出てきたその名前に、望美の体がこわばる。野宮リオ。
それは、ヒデが目下激しいラブシーンに取り組んでいる、若く美しい女優の名前に他ならないのだった。
「知ってます?野宮リオちゃん。超〜可愛くないですか?ハァ、私も野宮リオちゃんの顔で生まれたかったなぁ。あの顔だったらどんな男でも一瞬で好きになっちゃいますよね。そりゃ共演者キラーって言われても当然ですよ」
「共演者…キラー?」
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第9話:「あなたは働かないで、家にいて」エリート彼女からの提案に、男がした返事
―どこへも行かないで。私が、守ってあげるから。
これから先、順調に出世していけば、ヒデを養い続けることはそう難しくないだろう。
溢れ出てくる甘美な感情で、望美の胸が満たされる。
しかし…。ときめきと母性で満ち溢れる望美に向けられたのは、予想もしない言葉だった。
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