ひも結び Vol.8

「彼だけは…絶対に譲らない」嫉妬に駆られる女が探し当てた、インスタに残る動かぬ証拠

心の安らぎのため、人は愛を求める。

しかし、いびつな愛には…対価が必要なのだ。

―どこへも行かないで。私が、守ってあげるから。

これは、働かない男に心を奪われてしまった、1人の女の物語。

◆これまでのあらすじ

31歳の川辺望美は、役者志望のヒモ・ヒデを飼うことで過去の恋のトラウマを癒やしていた。ある日ヒデを「ペットの猫」と偽っていたことが本人にバレてしまい、ヒデは失踪。帰宅したヒデは役者として成功の一歩を踏み出していた


春の始まりらしい生ぬるい風が、望美の首元を吹き抜けていく。

ランチに訪れた『ローズマリーズ トウキョウ』で、望美はメニューとにらめっこをしながら凛と他愛もないおしゃべりを楽しんでいた。

「やっぱり今日はテラス席にして正解だったね!あったかくて気持ちいい。フジッリとレモンリングイネどっちにしよう?迷うなぁ」

いつになく口数の多い望美に、凛が微笑みながら問いかける。

「ふふ…。最近の望美さん、なんかウキウキしてますよね!もしかして、何かいいことあったんですか〜?」

「別に、何もないよ。外があったかくなってきて気分がいいだけ」

当たり障りのない返事で誤魔化すも、やはり口角が上がってしまうのを止められない。

だが、それも仕方のないことだ。

今日は火曜日。夜になればヒデがやってきて、望美の部屋で2泊は過ごしていく予定なのだった。

「なーんだ。もしかして、望美さんもついに恋に目覚めたのかと思ったのに!えーっと、私オレキエッテにしまーす」

そうおちゃらける凛の小ぶりな唇には、春らしい桜色のリップがのせられている。

その淡い発色がとても可愛らしく、望美は思わず凛に向かって褒め言葉をかけた。

「すごくいい色だね、そのリップ。凛ちゃんにすごく似合ってる」

珍しく望美から褒められた凛は、パアッと表情を明るくするとテンションが上がりきった様子で答える。

「えー、嬉しいです!このリップ、びっくりするくらい色が取れにくいし、めちゃくちゃオススメですよ。それに、イメージキャラクターが野宮リオちゃんで。そんなの絶対買っちゃいますよねぇ」

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