2019.12.21
SPECIAL TALK Vol.63西山:さすがにそんなことはなくて、最初のうちは閑古鳥が鳴いていましたよ。行列ができるようになるまで、半年かかりました。
金丸:半年で成果が出れば、大したものです。行列店になるために、何か具体的なことをされたんですか?
西山:クレームを聞かせてくれたら300円をお渡しする、という取組をしました。
金丸:それは、お客様からのクレーム?
西山:ええ。料理やサービス、店の雰囲気など何でもいいから、お会計の際に気づいたことを言っていただきました。そうして寄せられた声を「できること」「できないこと」に分けて、できることはすぐに実践して改善に努めました。
金丸:西山さんは「勉強嫌い」とおっしゃっていたけど、ものすごく勉強熱心ですよね。自分に足りないと思ったら、それが学べる環境に躊躇なく飛び込み、学んだことをすぐに実践する。西山さんの強さの秘密を垣間見た気がします。
業績悪化による回り道も新たな挑戦につなげる
金丸:先程リスクの話が出ましたが、焼肉チェーンの経営者として、BSE問題は大変だったでしょう?
西山:かなり大変でしたね。戦略が相当狂いました。当時、安くておいしくて、しかもわれわれの規模の飲食店に安定して供給できる牛肉というのは、アメリカ産しかありませでした。今でも一番コスパがいいのは、アメリカン・ビーフです。
金丸:みんな「アメリカの牛肉は固くて食べられない」と言っていたので、私も一時期までは偏見を持っていましたが、実際に食べてみると全然そんなことなくて、驚いたのを覚えています。
西山:そのアメリカン・ビーフが2003年に突然輸入禁止になり、オーストラリア産の肉しか使えなくなった。“牛角”は国内最大の店舗数を抱えていたので、スケールデメリットが働いてしまって。
金丸:みんながオーストラリア産に流れたものだから、需要と供給のバランスが崩れて値段も一気に上がりましたよね。
西山:しかもアメリカ産に比べて、オーストラリア産は少し肉質が固いんです。お客様から「牛角、まずくなったね」と言われ、「牛肉は危ない」という風評被害も起きました。あの時期は、お客様が2割くらい減ったでしょうか。飲食業の利幅はそんなに大きくないので、売上が2割減るとすぐに赤字体質になってしまいます。それでも業績悪化は一時的なもので終わり、その後はずっと収益を出すことができました。
金丸:ということは、BSE問題よりもコンビニチェーンの「am/pm」やスーパーの「成城石井」を買収したことのほうが、レインズインターナショナルの業績悪化につながったということですか?
西山:そうですね。今考えてみれば、非常に安易な事業拡大でした。外食以外でもフランチャイズ展開を進めていこうと考えていて。
金丸:それはそれでいいと思いますけど。いろいろ挑戦されていて。
西山:いやいや。会社の成長は鈍化したし、私自身、回り道をしたなと感じています。でもその後、経営再建のためにファンドの人たちと一緒に仕事をする機会を得られたのは、大きな収穫でした。それまでハーバード大学でMBAを取っているような人たちは周りにいなかったので、話している内容が非常に論理的で腑に落ちました。優先順位の付け方も「こんなに細かくやるんだ」と驚きましたね。
金丸:ロジカルシンキングにはパターンがあります。一度学んで身につけてしまえば、そんなに難しくはありませんよね。
西山:しかも、こちらは実践も経験しているから、理論と実践の両方を組み合わせることができますし。
金丸:それができれば怖いものなしですよ。
西山:そういう意味で、ものすごく感謝しています。この経験があったからこそ、もう一度事業をやりたいたいと強く思うようになりました。
金丸:再挑戦したい、と闘志に火がついたんですね。
西山:レインズを上場廃止にしたとき、機関投資家の方々から「期待していたのに」という声の一方で、「また戻ってきて」という励ましの声もいただいて。
金丸:それが、今また新規上場を目指すモチベーションになっている。でも、上場って大変ですよね。
西山:機関投資家回りもしないといけないし、上場後は株主総会と決算説明会が毎年あります。私はそういうことにエネルギーを使うよりも、新しい業態を作って展開していくことに時間を使いたい。だから、今後はファウンダーとして動きたいと考えています。
金丸:西山さんはクリエイターですか? それともプロデューサー?
西山:両方でしょうか。
金丸:さらには、イノベーターでもある。
西山:200店舗以上を展開するお店のコンセプトや業態を考えるのが得意なんです。そうした店を4つ、5つと作っているのは、おそらく日本に私だけだと思います。
金丸:上場後のダイニングイノベーションがどのように成長していくのか、私も楽しみです。
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