SPECIAL TALK Vol.63

~信用するけど、頼らない。独自の経営哲学で日本の外食を変革してきた~

小学2年生で実家が倒産。「いずれ稼ぐ」と心に決める

金丸:早速ですが、お生まれはどちらですか?

西山:東京都世田谷区です。私が生まれた頃はまだ田園都市線が通る前で、周りは畑ばかりののどかなところでした。

金丸:学校はどちらに?

西山:小学校は松丘小学校、中学校は弦巻中学校と地元の公立に。

金丸:どちらもレベルが高いと評判です。

西山:でも勉強は大嫌いでしたね。目的がよくわからなくて。「勉強して何になるの?」と思っていました。

金丸:私も同じです。「この問題を解けたら、年収がこのくらい上がる」とか、もっとわかりやすくしないと勉強する気が起きない(笑)。スポーツのほうはどうでしたか?

西山:スポーツは大好きで、小学校は野球、中学はバスケ、高校はアメフトをやっていました。

金丸:バラエティ豊かですが、意外にも柔道はやっていないんですね。弦巻中学校は柔道の強豪校として有名ですが。

西山:確かに。校区内に講道学舎という道場があって、全国から強い選手が集まっていましたね。柔道家の古賀元博さんとは同級生だし、彼の弟がバルセロナオリンピックの金メダリスト古賀稔彦さんです。

金丸:高校はどちらに進学されたのですか?

西山:土浦日本大学高校です。日本大学の付属校で、大学も日大に進学しました。

金丸:そうなんですね。ところで、西山さんはお父様も事業家でいらっしゃいますよね。

西山:はい。父は不動産業を営んでいて、それなりに羽振りがよかったのですが、私が小学2年生のときにオイルショックの影響で倒産しました。

金丸:それは大変だったでしょう。その頃、私は大学生でしたが、同級生が影響をもろに受けて、内定取り消しになった人がたくさんいました。不況といえば、最近だとリーマンショックを連想する人が多いけど、私としてはオイルショックのほうが社会に対する影響は大きかったように思います。

西山:父の会社は、テレビCMも打つくらいの規模の会社でした。子どもの頃は映像を4パターンほど見せられ、父から「知義、どれがいい?」と。私が「これがいい」と答えると、そのCMが採用されてテレビで流れる、という感じで。

金丸:そんな生活が倒産によって一変したわけですね。

西山:そうですね。でもそのまま成長していたら、ただのバカ息子になっていたんじゃないかなと。だからちょうど良かったんですよ。

金丸:でも、小学2年生だと働くわけにもいかないし、どうしようもないですよね。

西山:自分じゃどうしようもできなかったですね。家の雰囲気が良くなくて、子どもながらすごく不安でした。家が売られたり、母親が働きに出たりといろいろ環境が変わったし、「お金がない」と言う母に父がキレるようなことも何度かありました。飲んで帰ってきた父が「あの頃の俺は……」と昔話ばかりして。いばっている姿は本当にかっこ悪かった。

金丸:それでも西山さんを大学に進学させているのだから、立派なご両親ですよ。

西山:両親とも今はうちの2階に住んでいます。二世帯住宅なんですよ。

金丸:ちゃんと親孝行していらっしゃるんですね。

西山:父の失敗を見たからこそ「いずれ自分が大きくなったら、こんな思いをしなくてすむように稼ぎたい」と思うようになりました。

金丸:倒産をきっかけに、心の自立が促されたんですね。しかし思うんですが、事業には失敗がつきものなのに、日本は融資と引き換えに土地や家を担保に取るのが当たり前になっています。それだと失敗したとき、家族全員に被害が及んでしまう。家族もろとも路頭に迷うような状況は、絶対に変えるべきじゃないかと。

西山:確かに不動産担保じゃないと、ほとんどお金は借りられません。

金丸:家を取り上げるって、ダメージが大きすぎて再起不能に近い。金融機関がそこまで奪う権利はないし、そんなことするなら最初から貸さなきゃいいのにとすら思います。

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