SPECIAL TALK Vol.63

~信用するけど、頼らない。独自の経営哲学で日本の外食を変革してきた~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。

日本の食を海外へ。起業家精神は衰え知らず

金丸:自ら起業し、海外にも展開されている西山さんから見て、今の日本はどうでしょうか? 日本ではベンチャー企業がなかなかメインストリームになりませんが。

西山:それでも、だんだん変わってきたんじゃないでしょうか。起業したいという若者も増えましたよね。

金丸:新しいテクノロジーをもとに起業するケースは、以前より増えましたね。アメリカもビジネスモデルやアイデアで勝負するパターンと、テクノロジーで勝負するパターンがあります。本当はテクノロジーをもとにした起業が一番やりやすいのに、今まで日本の理系出身者は安定した大企業に就職して、自らリスクを取ろうとしなかった。ところが政府の後押しやAIブームもあり、東京大学でもベンチャーが生まれるようになってきました。まだまだこれからですが、流れは確実に変わりつつあります。

西山:金丸さん、「タイミー」というベンチャーをご存じですか? 私も投資する予定なんですが、22歳の大学生が起業した会社で、すでに時価総額が70億円くらいあるんです。この会社は「ウーバー」のアルバイト版みたいなことをやっていて、お店でアルバイトの欠勤が出ると、近くにいる子がすぐ代わりにやってくるというサービスを提供しています。面白いのは、働いた子たちが店を評価し、店側も働いた子たちを評価するという点です。

金丸:なるほど。双方向に評価し、それがデータとして蓄積される、というしくみですね。

西山:そのとおりです。これで就職活動がガラリと変わりますよ。面接に来た学生さんたちのデータを「タイニー」で見れば、「言われた仕事はきちんとこなす」とか「頭はよくても努力しない」とかいう傾向がわかります。面接ではみんな緊張しているし、誰もが同じことを言うので意味がない。学歴よりもむしろこういうデータのほうが、私は見たいなと思います。

金丸:面白いですね。「起業にはリスクが……」と言うけど、昔に比べたらそれほどリスクはありません。お金を集める手段だっていろいろと増えたし。若い人には、自分のアイデアでどんどん起業してほしい。

西山:学歴なんて、今やもう関係ないですからね。

金丸:フレンチシェフの三國清三さんは「中卒からいきなり博士になっちゃった」と話していました。三國さんは家が貧しくて高校に行けなかった。でも、フランス料理を極め、その功績が讃えられてフランスの大学から名誉博士号を授与されました。つまり、極めればいいんです。国語・算数・理科・社会のものさしで人を測るというのは、もはや意味がありません。

西山:まったく同感です。

金丸:実は今日お話を伺うまで、西山さんは悠々自適の生活を送っていてうらやましいな、と思っていました。フェイスブックを見ていると、海外旅行に行きまくり、美食を堪能して「人生を謳歌している。いいなあ」と(笑)。

西山:趣味なんですよね。いろんな食文化に触れて、絶景を見て回って。この1年の間にオーロラは2回見ました(笑)。

金丸:私は一度も見たことないですよ。うらやましい。最初に立ち上げたレインズを売却したとはいえ、“牛角”をはじめとするチェーン店はいまだに健在で、ダイニングイノベーションはますます成長しています。何より西山さん自身が挑戦を続けている。プライベートと仕事の両方を楽しんでいるんですね。

西山:私自身、そういう生き方を目指してきましたから。ちなみに明日から、ロサンゼルスとニューヨークに行ってきます。

金丸:えっ! 確認ですが、それは遊びじゃなくて仕事ですよね(笑)。

西山:仕事です(笑)。ロサンゼルスへは、これから展開したいと思っている寿司屋の業態の視察に、ニューヨークはすでに出店している店の様子を見に行きます。今後はボストンへの出店も予定していますが、“牛角”のときの経験があるので、だいたいの勝手はわかっています。

金丸:頼もしいですね。西山さんの手によって、日本の食文化がこれまで以上に海外に広がっていくことを期待しています。今日は本当にありがとうございました。

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