―愛情か、それとも執着か?
小さい頃から、聖母マリアのような妻になりたいと願っていた、秋吉紗奈32歳。
しかし、彼女の運命の歯車は、航平からプロポーズを受け取ったときから狂いはじめる。
少しずつ蝕まれていく彼女の心。愛は時に凶器となり得る。
繰り返される心理戦、前代未聞の惨劇が今、はじまる。
「狂気的なカノジョ」一挙に全話おさらい!
第1話:「誰とゴハン食べてきたの?」プロポーズされ幸せ絶頂の32歳女が、彼に違和感を覚えた夜
「紗奈は俺にとって大切なマリア様みたいな存在なんだよ。だから、ずっと俺のそばに居てほしい。結婚しよう」
それが東航平のプロポーズの言葉だった。
ザ・リッツ・カールトン東京45階の『タワーズ』で食事をしたあと、航平が取っておいてくれた部屋に入ると、お洒落な丸テーブルの上に赤い薔薇の花束とシャンパンが用意されていた。
ホテルの部屋から見えるハロウィンムードの賑やかな雰囲気の夜景が、秋吉紗奈の特別な日を祝福していた。
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第2話:“秘密はインスタに現る”。同僚の彼とゴハンに行ったことを、SNSで暴露したがる女の本性
会社の先輩・紗奈とランチをしたその日の深夜、美雪は一人暮らしをしている池尻のマンションの部屋で黙々とインスタグラムを更新していた。
会社帰りに寄ったタイ料理店で撮ってきたカレーの写真をアップしながら、手早くコメントを追加する。
”偶然、会社の先輩と会っちゃった!”
美雪のインスタのフォロワーは50人程度だが、同僚や上司など会社の人間も多く繋がっていて、みんな気軽に「いいね」を押してくれる。
―誰か気付かないかな。この先輩っていうのが東航平だってことに・・・。
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第3話:大好きな彼の結婚式、2次会の幹事をひきうけた女の魂胆とは
「美雪ちゃん、このあいだ話した通り、5月に結婚式があるんだけどね。そのあとの2次会の幹事、お願いできないかな」
紗奈からLINEが送られてきた翌週の火曜日、細く雲が漂う秋空の下、2人はランチをしに『トラットリア ヴォメロ イル マーレ エ モンテ』に来ていた。紗奈は両手を胸の前で合わせ、眉根を寄せながら美雪の視線をまっすぐに捕らえている。
「え、私がですか・・・?」
まさか好きな人の結婚式の二次会の幹事をすることになるなんて、美雪は一瞬の動揺を隠しきれなかった。
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第4話:「もう東京に戻りたくない」同僚の彼と楽しむ、誘惑的な大阪出張の夜
「あ、紗奈! お疲れさま」
「仕事中にごめんね、2次会の打ち合わせをする日を決めようと思って。今大丈夫?」
そう小声で切り出すと、志穂はニッコリと笑顔を見せて頷いた。
「うん、大丈夫。あ、でも、打ち合わせなら今井さんも一緒の方がいいよね」
「そうだね、もし美雪ちゃんも会社にいるなら予定を聞いちゃおうと思ったんだけど…」
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第5話:「え、彼にボディータッチしてた?」ホームパーティ中、笑顔の下で錯綜する女たちの本音
そして午後12時半―。紗奈がキッシュを作り終え、テーブルに並べようとしたそのとき、玄関のインターホンが鳴った。
「いいよ、俺、出るから」
航平が玄関に向かったあと、紗奈もモニターを覗くと、そこには笑顔の美雪が立って手を振っていた。
―美雪ちゃん…。パーティーは午後1時からなのに、なんでこんなに早く来たんだろ。
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第6話:「セカンドでもいいから...」出張中に婚約者がいる男にせまる、26歳女の略奪計画
一瞬の沈黙が流れた。窓の外では雪が降り、時刻はもう21時になろうとしていた。すぐに店を出ないと最終の新幹線には間に合わない時間だ。それを2人とも十分にわかっているはずだった。
「先輩。私、セカンドでもいいんです。ずっと先輩の近くにいたいだけだから。紗奈さんと争おうなんて思っていません。ただ」
胸が苦しくなって、美雪はそこで口をつぐんだ。ワイングラスに視線を移し、吐息とともに言葉を続けた。
「今夜だけは、私のことを1番に考えてくれませんか...?」
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第7話:「結婚さえすれば…」彼の女遊びに目をつぶり、結婚式当日を迎えた花嫁の目論見
支度をはじめる前に、iPhoneを手に取り、届いているメッセージを確認した。昨夜、紗奈が眠ったあとに届いた同僚の志穂からのメッセージを開く。
「紗奈、いよいよだね。きっと素敵な式になると思う! 主人公は紗奈だよ。自信を持ってがんばって」
志穂らしいハツラツとした言葉を読みながら、紗奈はふっと口元が緩む。しかしそれも束の間、彼女はきゅっと口を閉じ、気を引き締めた。
―そう、今日は私が主役。だから美雪に思い知らせないといけない。航平の妻は私なの。もう余計なことはさせない。
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第8話:「彼を略奪したい」結婚式当日に花嫁を絶望に陥れた、26歳女が仕掛けた罠
プロジェクターで流すプロフィールムービーとビデオメッセージのタイミングをレストランの店員に説明しながら、美雪は自分の胸の高鳴りを確かに感じていた。
―これは私からのサプライズプレゼントですよ、紗奈さん。私は負け組なんかじゃないってこと、今から証明しますね。
事前に用意されたプロフィールムービーは航平と紗奈が作成したもので、ビデオメッセージは美雪が作成したものだった。社内で2人へのお祝い動画を募り、それを編集して繋げたのだ。
そしてビデオメッセージの最後には2人に関する思い出の写真がまとめて映し出される予定で、今日の結婚式の写真もその中に入れることとなった。
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第9話:「怖い・・・!」結婚1週間で男がドン引きした、妻から届いたLINE
航平はもう出勤したので家にはいない。リビングには引っ越し後に片付けられていない段ボールが、まだいくつか残っている。
「はぁ、結婚しても何も変わらないな。結婚さえすれば、なんとかなる、そう思っていたのに・・・」
紗奈は思わず溜息をつく。結婚式が終わってから、紗奈はずっと体調を崩している。体はもちろんだが精神的にもかなり追い詰められていた。
それもそのはず。二次会の幹事だった美雪の仕業でメッセージムービーの中に美雪と航平のツーショット写真が1枚紛れていたから。
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第10話:「尾行されてた?」妻の出張中、女と旅行を楽しむ夫。彼を現実に引き戻した、恐怖の着信
「日曜日の夜には帰ってくる予定だから。たまにはひとりで羽を伸ばしたら?」
いじわるっぽい笑顔をつくりながら、航平を一瞥してキッチンに入る。
「紗奈がいないと寂しいけど、仕方ないからひとりでゆっくり過ごすことにするよ」
そう笑う航平の言葉を受け流し、紗奈は洗剤を取り出してスポンジで泡立てた。1点の汚れもないシンクを入念に磨きはじめる。
―もうあなたの嘘は聞き飽きたの。今度は私が嘘を言う番。あなたが一生忘れられない嘘をね・・・。
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第11話:「重罪なのよ!」人の夫を誘惑する、26歳“欲しがり女”の顛末
紗奈は世田谷区の閑静な住宅街の中でひとり、歩を進めていた。「東」と表札のある一軒家の前で足を止める。
今頃、熱海の旅館で今は夫となった航平と浮気相手の美雪が仲良くやっていることは、雇っている探偵からの連絡で把握済みだった。彼らは金曜の夜から熱海に向かい、今夜、東京に戻る予定なのだろう。もちろん、2人が会うことを予想した上で、紗奈は出張に行くという嘘をついていたのだった。
―泣いて謝ってももう遅いのよ、美雪。あなたはもうまな板の上の鯉。晒し者にしてやるんだから。
紗奈はすっと腕を伸ばし、航平の実家のインターホンを押した。
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第12話:“離婚届”が突然送られてきた。夫への復讐を誓う、女の怨念
「もしかして、食欲ない? ごめんね、なんか押しかけるみたいになっちゃって」
「ううん、来てくれて本当に嬉しい。ちょっとたくさんは食べられないかもしれないんだけど、私のことは気にしないで志穂はたくさん食べて」
志穂と話していても、心はどこか別の場所に置き忘れたような紗奈の感覚は変わらなかった。頭では理解しているつもりなのに、心が追いつかない。
―家に帰ってこない航平は、今頃美雪とともに過ごしているのだろうか・・・。
「あのさ、志穂。航平、会社は行ってるの?」
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