―愛情か、それとも執着か?
幼い頃から、聖母マリアのような妻になりたいと願っていた、秋吉紗奈32歳。
しかし、彼女の運命の歯車は、航平からプロポーズを受け取ったときから狂いはじめる。
少しずつ蝕まれていく彼女の心。愛は時に凶器となり得る。
繰り返される心理戦、前代未聞の惨劇が今、はじまる。
「紗奈は俺にとって大切なマリア様みたいな存在なんだよ。だから、ずっと俺のそばに居てほしい。結婚しよう」
それが東航平のプロポーズの言葉だった。
ザ・リッツ・カールトン東京45階の『タワーズ』で食事をしたあと、航平が取っておいてくれた部屋に入ると、お洒落な丸テーブルの上に赤い薔薇の花束とシャンパンが用意されていた。
ホテルの部屋から見えるハロウィンムードの賑やかな雰囲気の夜景が、秋吉紗奈の特別な日を祝福していた。
仕事帰りの金曜の夜。
今日は、紗奈の32歳の誕生日と付き合いはじめて1年記念のお祝いのはずだったのに、こんなサプライズが待っているなんて。
会社の後輩で3つ年下の航平との結婚を夢見ながらも、まさか現実になるとは思っていなかった紗奈は、この光景が信じられない心境だった。
航平はポケットからカルティエのリングケースを取り出すと、驚きのあまり固まっている紗奈の指に優しく指輪をはめた。
―航平、本当にこんな私でいいの・・・?
紗奈の平凡だった人生が、彼と付き合ってからはめくるめく華やかな世界へ導かれていった。
名の知れたレストランで食事をしたり、花束をプレゼントしたりするような男性とは付き合ったことのなかった紗奈は、その奇跡のような日々に翻弄されながらも、航平の愛を受け入れる以外の選択肢は考えられなかった。
この記事へのコメント
最初から出てくる後輩女性は怪しいでしかない。笑