2019.11.07
呪われた家 Vol.12―結婚―
それは、愛し合う男女が二人で新しい家庭を築くこと。
だがその儚い幻想が、見事に打ち砕かれたら…?
女は生まれ育った家を、それまでの人生を捨て、嫁ぎ先に全てを捧げる。結婚と同時に“家”という呪縛が待ち受けているのだ。
奇妙な風習、監視の目、しきたり、そして義家族たちの薄笑い…。
夜な夜な響くその声は、幸せでいっぱいだったはずの新妻の心を蝕んでゆく。
―逃ゲヨウトシテモ無駄ダ…
「呪われた家」一挙に全話おさらい!
第1話:玉の輿に乗った26歳・新妻。彼女が恐怖に陥った、夫の実家での“しきたり其の一”とは
看護師の沙織は、総合病院の小児病棟で働いている。夜勤もある三交代制のシフトは激務だが、まだ若く体力もあり、仕事にやりがいも感じていた。
仕事柄もあってか、看護科時代の友人も同僚も、周りの同世代を見てもいわゆる結婚ラッシュが来る様子はない。
まさか付き合って1年で、しかも26歳で、誕生日でもクリスマスでもないこのタイミングでプロポーズを受けるとは思ってもいなかったが、宗次郎は最愛の恋人だ。断る余地はない。
沙織は、少しずつ幸せを実感し始め、自分と宗次郎の結婚生活を思い描き始めていた。
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第2話:「三つ指をついて旦那様をお出迎えが絶対」姑の笑顔に、26歳妻が恐怖に陥った瞬間
体力には自信があったつもりだが、あの日以来、体が重く感じる。心にもモヤがかかったように気分が晴れず、宗次郎とも連絡を取れずにいた。
「お姉ちゃん、体調悪いの?オムライス作ったよ。一緒に食べよう」
「悪いけど、ちょっと今は食欲なくて…」
「さては早くもマリッジブルーね。いいなぁ。宗次郎さん優しくて素敵な人だし、御曹司でしょ。まさかお姉ちゃんが玉の輿に乗るなんて」
沙織がようやく体を起こすと、春奈は並んでベッドに座る。そして心配そうに覗き込んできた。
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第3話:玉の輿に乗ったはずが…。夫の実家からの「男児を産め」というプレッシャーに縛られる女
「母さん。沙織が来てくれたよ。じゃあ、俺は仕事行くね」
宗次郎はそう言うと挨拶もそこそこ、そそくさと出て行ってしまった。当然沙織は戸惑ったが千鶴子は嬉しそうに手招きしている。
「沙織さん、わざわざありがとう。お忙しいのに来てくださって。寝巻姿でお化粧もしてないのに、こんなところを見られて恥ずかしいわ」
「そんなこと気にしないでください。私は看護師ですし、見慣れた光景ですよ。それに、もうすぐ家族になるんですから」
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第4話:「しばらく距離を置こう…」結婚前に男から受けた悲劇の提案に、絶望する26歳女
―一刻も早く、宗次郎と会って話さなきゃ…。
「男児を生むために“月のもの”の周期を教えて欲しい」
沙織は義母の発言に恐怖を感じ、思わずその場から逃げ出してしまった。
できれば同居は避けたい。宗次郎に会って、そう伝えようと考えていたのだった。
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第5話:密室に閉じ込められた女。新妻を“軟禁”しようとした、義妹の真の目的とは
騒音など一切聞こえない隔離されたようなこの環境がとても落ち着くのだと言う。静寂に包まれたこの家に唯一響くのは、美しいピアノの旋律だ。
沙織はまるでその音楽に吸い寄せられるように廊下を進む。うっとりとピアノの音色に耳を傾けながら奥の部屋の前を通りかかると、ドアが少し開いていた。
そっと部屋を覗くと、瑠璃が体を柔らかく揺らしながらピアノを弾いていた。沙織はその横顔に目を奪われる。
長い黒髪と透き通るように白い肌。赤く艶やかな唇。ただでさえ美人なのに、ピアノを弾いている姿はこの世のものとは思えないほど神秘的な美しさを放っていた。
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第6話:「アハハハハハ…」狂った女が夜な夜なバレエを踊る、恐怖の館に嫁いだ女の悲劇
「朝美さん、私の職場に昨日電話しましたか?」
沙織は、まっすぐ朝美のことを見つめて言った。
「いいえ」
その言葉とは裏腹に、「電話したわよ」という口ぶりでにっこりと笑ってそう言うのだった。見開いた目は血走り、血色のない唇が震えている。初めて見る朝美の笑顔は、おぞましいものだった。
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第7話:「2人きりで海外挙式をしよう」男の甘い言葉は、新妻の心を媚薬のように支配してゆく…
「宗次郎、一緒に旅行に行かない?」
地方での研修から戻って来た宗次郎に、沙織はそう言った。
いったんこの家から離れ、冷静になりたい。ゆっくり眠りたい。宗次郎と二人でこれからについて話したい。無理な希望だとわかっていても、思いだけでも伝えたかった。
千鶴子がバレエを踊る姿を見て以来、恐怖で安眠できる日はなかった。このままでは精神的に崩壊してしまうと自覚した沙織は、人手不足の夜勤中心のシフトを希望し、なるべく夜間家にいないようにしていた。
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第8話:「何もかも忘れて、あなたに身を委ねたい…」婚約者と過ごす久しぶりの夜、女に掛けられた罠
宗次郎は、沙織がはじめて心の底から愛した男性だ。仲の良い姉妹で育ち、中学高校六年間を女子校。そして大学の看護科に進学し、看護師という女社会。男性との関わりは同年代より少なかったと思う。
何度か男性と付き合った経験はあるが、本気の恋というのはいまいちピンと来ていなかった。だからこそ宗次郎への思いは、特別だった。
―私には、この人しかいない。
その宗次郎に対する気持ちは出会ったころから今になっても変わらない。離れたくない。別れるなんて考えたこともない。ただ、沙織は追い詰められていた。
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第9話:「この部屋に、もう一人いる・・・」真夜中の無邪気な子供の言葉に、恐怖に陥った新妻
京一郎はここ最近、急に沙織に懐くようになり、甘えたような笑顔を向ける。
「でも、どうせぼくたちが残すと捨てるんだよ。捨てるくらいなら女の人が食べればいいのに。変なの」
京一郎の言う通りだ。誰も食べたくもない豪華な食材が並ぶのはおかしいし、男女でメニューに格差があるなど、この時代にあまりにもそぐわない。
ただ、ここは普通ではない。沙織が考える常識など通用しないのだ。
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第10話:「女は浮気する・・・」そう思い込み嫁を罵倒する男の、悲しい過去とは
―病院に行かなきゃ…。まずは検査薬を買ってこよう。
今朝はひどい吐き気とめまいで起き上がれず、ベッドの中で出勤する宗次郎を見送った。
この家では「夫の出迎えや見送りは玄関で三つ指つく」というのがしきたりなので、この姿を義母の千鶴子に見られたらショックで卒倒するだろう。
―もし妊娠していたら…。
第10話の続きはこちら
第11話:「私、命を狙われているの・・・」彼女の悲痛な訴えを“思い違いだ”と一刀両断する男
気が付いたとき、沙織は病院のベッドに寝ていた。
頭が割れるように痛み、体は重くとても動かせるような状況ではない。
状況が分からず一瞬パニックに陥るも、少しずつ恐ろしい記憶がよみがえってきた。
視界の隅に見える鮮血。救急車のサイレン。そして暗闇の中でぼんやりと浮かぶ顔…。
―…朝美さんがいた?
第11話の続きはこちら
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