聖女の仮面 Vol.8

「自分の顔が、嫌いだったの」。友人が、10年前とは別人のように美女となった本当の理由

女は、仮面を被った生き物だ。

優しい微笑みの裏に、怒りや悲しみ、ときに秘密を隠し、本当の自分を偽りながら暮らしていく。

たとえば聖女のような女にだって、裏があるかもしれない。

それを美しい仮面で覆い隠しながら、生きているのだ。


◆これまでのあらすじ

恵子が高校生の頃、聖陽女学院で、ある一人の女生徒が、理由もわからず突然転校していった。

あれから10年。27歳となった恵子たちの前に、美しく姿を変えて現れた絹香

絹香の家に招かれた恵子は、さくらの過去を知って驚く。そして、認知症を患う絹香の父親から「恵子さんは可哀想な子」と、聞かされて…?


「絹香、恵子さんは可哀想な子なんだから、仲良くしてあげなさい。社長から、くれぐれもよろしくと言われてるからね。」

―可哀想な子って…私が?

驚く恵子に笑顔で話しかける男性は、絹香の父親だ。

絹香から、父親は認知症を患っていることは聞いている。そのせいなのか、彼は目の前の恵子のことを、娘である絹香と勘違いしているようだ。

「あの、違います。私、恵子です。」
「…え?」

おろおろと否定する恵子に、絹香の父親は怪訝な顔を浮かべている。

どうしてよいかわからず絹香を呼びにいこうとした時、扉の向こうから、絹香が、コーヒーカップが乗ったトレイを持って現れた。

「お父さん、ここにいたのね。部屋に呼びに行ったらいないから。…どうしたの?」

父親と恵子の間に、何か異変を感じたのだろう。絹香は急いでトレイをテーブルに置くと、父親の背にそっと手を添えた。

「調子がよくなさそうね。そうだ、お昼の薬は飲んだの?恵子、少し待ってて。」

絹香に促され、父親は不思議そうに恵子を見ながら、娘と共に部屋を出て行ったのだった。

数分後、一人で戻ってきた絹香は、謝罪の言葉を口にするや否や、そっと扉を閉めた。

「恵子、何かあった…?」

「さっき、私のことを絹香だと勘違いしたお父様が、言ってたわ。私の父から、私と仲良くするように言われてるから、って。…一体、どういうこと?何もかもが、よくわからないんだけど!」

戸惑いながらも強い口調で話す恵子に、絹香は一瞬驚いた表情を見せた。しかしすぐに事態を理解したようで、ゆっくりとまばたきをする。

「そうよね、驚いたわよね。…順を追って話すわ。」

絹香は、呼吸を整えるように息を吐いた。

「私は、あなたのお父様に頼まれたの。だから、友達になるため、あなたに近づいたのよ。」

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