200億の女 Vol.15

「あなたの奥さんが好きです」。初対面の男から、妻を奪うと宣言された夫の悲し過ぎる夜

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

◆これまでのあらすじ

詐欺師の罠をかわしたかに見えた智だったが、仕事の大舞台でのトラブルを詐欺師に救われ、ついに男に心を許してしまう。そして夫との関係が悪化する中で、ついに詐欺師に投資の話を持ちかけられ、検討し始める。さらに、詐欺師は夫に接触。その心を揺さぶり始め…その間に智の投資への意志は固まっていき…。


夫:大輝「あなたは、妻が最も苦手とするタイプの人間だ」


「奥様と2人で飲んだのは、採石場のパーティの後です。もう遅かったこともあって、神崎家の宿泊施設にご招待いただいて」

小川さんの言葉に、俺はあの夜、バーテンダーの村松さんにまで着信を残した、あの時の自分の焦りを思い出してしまった。

やっと電話が通じた時、智は言った。

「ちょっと打ち上げ…というか、お礼をしていて」

「珍しいね?智が誰かと打ち上げなんて…誰?」

俺がそう聞くと智は、大輝が知らない人、と答えたのだけど、まさかその知らない人が自ら名乗り出てくるとは。

智だって、仕事相手と2人で飲む事くらいあるだろう。そう自分に言い聞かせてみても、胸のざわつきは消えず、この美しい男の事が、どうにも気に入らない。

田川弁護士事務所と契約したのは義父で、それは相続にまつわる案件のためだったはず。しかも義父からは、智にはまだ内緒に、と言われていた。なのになぜ、その事務所の一弁護士が智の弱さを見る程の近しい関係になっているのか?

「小川さんは随分、妻に信頼されているんですね。あそこは、家族の別荘同然の非常にプライベートな場所で、智が家族以外の人を連れて行ったのは初めてだと思います。妻とは、いつから、どんなお仕事を?」

苛立ちを感じ取られぬよう、嫌味に聞こえぬよう気をつけながら、ゆっくりと質問した。

すると小川さんは、グラスの中の丸氷を転がしていた指を止め、クスっと笑ってから顔をあげた。

「回りくどい聞き方はやめてもらえませんか?ご主人が気になるのは、僕の仕事の内容じゃなくて、僕と奥さんの間に、男女の関係があるかどうか、でしょう?あの夜、僕と奥さんの間に何があったか、知りたいんでしょう?」

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