2019年。
「令和」という新元号が制定され、誰もが新時代の幕開けを喜んだ。
しかしだからと言って、これまでの慣習や価値観がアップデートされる訳ではない。
社会生活では、平成を通り越して「昭和的」な価値観にぶち当たることがあるのも現実だ。
このお話は、令和を迎えた今年に保険会社に総合職として入社した、桜田楓の『社会人観察日記』である。
1996年生まれ、生まれたときからインターネットが当たり前にある「Z世代(ジェネレーション・Z)」である彼女が経験する、異なる価値観を持った世代との出会いとは…?
―よし…!今日からいよいよ社会人か…
2019年4月1日。
楓は、就活の時から着ているスーツのジャケットに腕を通し、学生時代には味わえなかった喜びと緊張が入り混じる複雑な気持ちで、玄関を出た。
4年間学生生活を過ごした早稲田大学の卒業式に臨んだのは、つい1週間前のこと。
楽しかった学生生活が終わるのは寂しかったものの、これから始まる社会人生活への期待に胸膨らませていた。
今日は年度のスタートにふさわしい、晴れやかな空だ。楓は意気揚々と、入社式が行われる丸の内の本社ビルへと向かった。
「楓!会えてよかった!一緒に入社式に行こう。」
後ろから声を掛けられ、振り返ると明日香がいた。明日香は、内定者懇親会の時に仲良くなった同期だ。
「おはよう!行こう、行こう。入り口で詩織とも待ち合わせてるから、後で来ると思うよ!」
内定式は1時間ほどで終了し、その後に人事担当者がこれからのスケジュールや手続き等の話をする時間となった。
「えー…。改めて入社おめでとう。君たちは、これから一緒に支え合う同期だ。この年になっても思うが、同期は一生ものだぞ。お互いに尊重し合うように。」
―同期が大切、って社会人の決まり文句なのかしら…。
「同期は大切」と、社会人になった大学の先輩からはよく聞いていたが、40代後半と思われる人事担当者までもが話に織り込んでくるとは、と思わず苦笑した。
「明日から1カ月間、私達人事の教育担当者が、入社導入研修を行う。外部からの講師も招く予定なので、礼儀等しっかりするように。その後は、それぞれの事業所に分かれてOJTがスタートだ。」
楓は、人事担当者の話を片耳で聞きながら、資料に目を通す。
―さすが、日系大手…。名刺の渡し方から電話の応答まで、研修に組み込まれてるんだ。
この記事へのコメント
ならPC立ち上げて仕事ができる態勢にしておくのは当たり前。
コメント欄の方々は皆さんもう社会に出てしばらく経っているので「時間内にやることやれていればOK」というスタンスですが(私も普段はそう)、まだそれすらできない超新人なのであれば、あと15分早く来ればいいだけですし、もう少し素直になってみてもいい気がしてしまいました。仕事を覚えるまでは、やはり周囲も「成果」より「やる気(=少し早めに出社など)...続きを見る」を見てしまうだろうし、従業員の多い大手ならなおさらかと。
もちろん繰り返しになりますが、仕事を覚えてからは「成果」を出していればどんな働き方でもよいだろうとは思います。
9時から準備するなら遅くない?て思うけど。