今後のOJT研修に関して打ち合わせしましょう、と瀧本さんに言われ、楓は会議室に行った。
「桜田さん。早速だけど、今日みたいに15分前だと、皆がそろっているから、出来るだけ30分前に来るようにしようか。30分前だと、まだほとんど出社していないと思うし。私も新人の頃はそうしていたし。」
「え?」
思わず聞き返す。
「勤怠管理の始業開始は、OJT期間だと9時からしか登録出来ないと人事に言われたのですが…。30分前から出社するのなら、8時半から始業登録をしてもいいのでしょうか?」
「やぁねぇ、桜田さん。始業前の30分なんて、これから始まる1日の準備時間ぐらいに思って出社したらいいのよ!人事に言われた通り、9時から始業開始は変わらないわよ」
そう明るく笑いながら話す、瀧本に対して、楓は疑問でいっぱいになった。なぜその時間が、労働時間には入らないのだろうか。
―労働時間に入らないんだったら、私、9時に出社します。
心の中でそう呟きながらも、「出来るだけ、頑張ってみます」と新人らしくにこやかに答えたのであった。
◆
昼休み、先ほどの瀧本とのやり取りについて、明日香・詩織にLINEした。
すると早速、2人からは同情の返信がきた。
―えーっ!!!そんなこと言われて大変だったね。
―新人だから早く来てとか、部活じゃあるまいし。
そんなLINEが、テンポよく飛び交う。
―体育会出身じゃなくても精神論で生きている人って、意外に多いよね。
詩織がそんな風に言うのは、彼女も何か言われたのだろうか。
―早く来ることで周りの動き観察出来るし、成長につながるよ!って。それはお仕事だから、対価としてお給料が発生する勤務時間にならないのかなぁ?
2人とのやり取りでようやく落ち着きを取り戻し、再び午後の業務へと戻った。
この記事へのコメント
ならPC立ち上げて仕事ができる態勢にしておくのは当たり前。
コメント欄の方々は皆さんもう社会に出てしばらく経っているので「時間内にやることやれていればOK」というスタンスですが(私も普段はそう)、まだそれすらできない超新人なのであれば、あと15分早く来ればいいだけですし、もう少し素直になってみてもいい気がしてしまいました。仕事を覚えるまでは、やはり周囲も「成果」より「やる気(=少し早めに出社など)...続きを見る」を見てしまうだろうし、従業員の多い大手ならなおさらかと。
もちろん繰り返しになりますが、仕事を覚えてからは「成果」を出していればどんな働き方でもよいだろうとは思います。
9時から準備するなら遅くない?て思うけど。