2019.09.21
SPECIAL TALK Vol.60石山:私は「ピース・メッセンジャーになりたいんです」と赤裸々に。すると「今のように何が起こるかわからない時代では、思い描いていることをゼロからかたちにできる人間になったほうがいい。そのためのスキルはリクルートで学べる」と。
金丸:柏木さん、うまいですね。
石山:その場で握手してしまいました(笑)。
金丸:石山さんはどんな分野を担当されたんですか?
石山:人材領域ですね。約10社の大企業のクライアントを担当していました。そこで、個人の人生よりも組織の論理が、合理性のもと優先されてしまうケースをたくさん目にして、「このままじゃいけないんじゃないか」と思うようになりました。たとえば転勤にしても、会社にとっては仕方のないことかもしれませんが、個人の人生に与える影響はものすごく大きいですよね。あるいは、女性の進出をアピールするために、実体が伴っていない、数値目標を達成するためだけの施策を行っているような大企業もあって。
金丸:柏木さんが言ったほどには、ピースメッセンジャーに近づけそうにはありませんが。
石山:でも逆に、そこで社会の縮図である企業の内実を見られたことは勉強になりました。経済の仕組みや、社会の意思決定の仕組みを理解したうえで、「じゃあ組織にぶら下がらないで生きていける人を増やすにはどうしたらいいんだろう」「個人がもっと自由に生きていけるように、どんなインフラが必要なんだろう」と考えられるようになりました。ちょうどその頃、シェアリングエコノミーという概念を知り、強く興味をもちました。それで3年半勤めたリクルートを辞めて、当時、マザーズに上場したばかりで、スキルシェアサービスの最先端であるクラウドワークスに入社することにしたんです。
自分が見たい社会をこの手で作り上げたい
金丸:事業者としてシェアリングエコノミーの世界を見て、どう感じましたか?
石山:大きな視点からいうと、たとえば、規制の問題や既存市場との対立など業界全体をデザインしていかなければいけないのではないかと感じました。小さな市場の競争環境で戦うよりも、新しい産業をどう環境整備できるのかという部分に関心が移っていきました。
金丸:そのとおりです。現在、シェアリングエコノミーのプレイヤーはほとんどがベンチャーです。生き残るためには稼ぐ必要もありますが、お互いのユーザーを取り合うのではなく、改革派同士で組んで既存の巨人を倒しにいく、あるいは潜在的なマーケットを掘り起こしていくという方向に向かわなければなりません。
石山:ですから、今後も私は個社に戻ることはないかなと思っています。業界団体や社団法人など、個社ではなく、業界内で一緒に手を取り合って、大きくしていくことのほうが自分にはしっくりくる気がするので。
金丸:その考えのもと、シェアリングエコノミー協会に移られたんですね。個社には戻らないということですが、石山さんのアプローチは、ある種独特ですよね。「社会を変えたい」というときに、「ベンチャー企業で新しいサービスを生み出すんだ」という人はそれなりにいても、政策に食い込んでいこうと狙いを定める人は、特に若い人にはあまりいません。
石山:そこはリクルートでの経験があるからかもしれません。どうやって”公共の景色“、つまり社会の構造を変えていくかというと、大きなお金と人が動く部分、政策や法律に切り込んでいくべきだと考えています。
金丸:シェアリングサービスに対して、既存の事業者の抵抗は強固ですよね。ただ、私がかねてから考えているのは、シェアリング「エコノミー」ではなくて、シェアリング「ソサエティ」と呼んだほうが、実情に沿っているのではないかと。
石山:それにはすごく共感します! 「エコノミー」というと、営利が全面に出てしまいますから。
金丸:新規参入が既存のビジネスを脅かすか脅かさないか、脅かさないためにはどうやって規制するのか、を常に考えているのが現在の日本です。これじゃあ、社会の構造は変わりません。
石山:実際には、これまでお金を産んでいなかった遊休資産を、必要とする人に使ってもらおうという考え方ですからね。
金丸:これまでになかったCtoCのサービスでは、新しいリスクが生まれることは避けられません。それを低減するために、インターネットのプラットフォームがあり、どこで何が起きているのかがファクトでわかって、みんなで評価しあい品質を担保し合う。たとえばUberの場合は、利用者と運転手の双方がお互いを評価します。そのような仕組みができていれば、もう規制は外してもいいと思いますよ。
石山:まさに現在、「シェアリングエコノミー基本推進法」という個人間のビジネスを新たに位置づけるような法律を作れないか、検討しているところなんです。
金丸:素晴らしい。これから石山さんがどんな活躍をしていくか、とても楽しみです。
石山:ありがとうございます。正直なところ、私は「何者かになりたい」という気持ちはあまりありません。でも、自分が見てみたい社会を作りたい、社会の景色が変わる瞬間を見てみたい。そのために結果的にいろいろなことに手を出しているという状況です。会社の社長とか、政治家とか、職種に対するこだわりは本当になくて。ただ自分が変えたい世界を実感できるのであれば、どんなことでもやっていきたいですね。
金丸:ぜひ、共に社会の景色を変えていきましょう。今日は貴重なお話を、本当にありがとうございました。
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