2019.09.23
病める時も、ふくよかなる時も Vol.1まだ20代の若いママ・小野さんは、リビング奥のサイドボードにズラリと並べられた写真立ての一群を指差して言った。
「美月先生のご主人、先生のことを独り占めしたいから子供はまだまだいらない!2人でいたい!って言ってるんですって。本当、仲良しで羨ましいですよね」
飾られている写真立ての中身は、全てが夫婦の2ショットだ。
付き合っている頃に撮った自撮り写真や結婚式の写真、去年の美月の誕生日ディナーでレストランで撮ってもらった写真まで、全て夫の誠司が自ら選別して飾っている。
「あはは、お恥ずかしいです」
照れ臭い事実に美月がペコリと頭を下げると、山田さんが「ええー!」と小さく叫びながらサイドボードへと駆け寄って行った。
そして、並べられた写真立てを一つ一つ手に取りながらため息を吐く。
「ご主人、イケメン!たしか、やり手の歯医者さんなんですよね?いいなぁ。イケメンで、お金持ちで、こんな広いお家があって、その上奥さんのこと大好きな旦那様なんて…。美月先生、幸せですねぇ」
だが次の瞬間、まじまじと写真を見つめていた山田さんから、思いもしない言葉が投げかけられた。
「ていうか、若い頃の美月先生…めちゃくちゃ痩せてて可愛い!今と全然違いますね!」
「ちょ、ちょっと山田さん…」
気まずそうにする小野さんを見て、山田さんもハッと表情を変える。
しかし美月は、微妙な空気を吹き飛ばすように大きな笑い声をあげた。
「本当、もはや別人ですよね!お料理教室はじめてから食べ過ぎちゃって、すごく太っちゃったんですよ〜」
美月が笑っているのを見てホッとしたのか、小野さんと山田さんも顔を見合わせて笑った。
事実、美月は、結婚してから太ってしまったことなど全く気にしていなかった。
だいたい、年の初めに計った時の体重は54キロ。158センチで54キロなんて、“太っている”のうちにも入らないだろう。結婚前に46キロだったのが痩せ過ぎだっただけ、とも言えるのではないだろうか。
それに、色白でアゴが小さく瞳の大きい美月は、多少ぽっちゃりしたところで顔つきが大きく変わるようなタイプでもない。
誠司だっていつも、柔らかく肉を湛えた美月の二の腕を「美月は本当に可愛いね」と言いながら優しく撫でてくれるのだ。
体型の変化は、仕方のないこと。
大らかな考え方は、自分の長所。
美月は、心の底からそう考えていた。
「皆さんも他人事みたいに言ってるけど、もしかしたら今日のパンが美味しすぎて太っちゃうかもしれませんよ〜?さぁ、そろそろ粗熱も取れたので、飾り付けしましょうか!」
待ちきれなくなった子供達に応えるように、美月は冗談を言いながらレッスンを再開させる。
ほのかに温かいパンを子供達と一緒につまみ食いしながら、美月はのんびりと思う。
―見た目が多少変わったところで、私は私だもん。誠司さんが可愛いって言ってくれる間は、な〜んにも気にならないなぁ。
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