2019.09.23
病める時も、ふくよかなる時も Vol.1「わぁ〜、いいにおい〜!」
GAGGENAU(ガゲナウ)のビルトインオーブンから取り出したばかりの焼きたてパンを見て、3人の幼稚園児が瞳を輝かせた。
美月は、いつの間にか緩んでしまった長い栗色の髪を、もう一度頭の高いところでお団子に結び直すと、パチンと大きな音を立てて胸の前で両手を合わせた。
「みんな、すっごく上手に作れたね〜!パンが少し冷めたら、かわいく飾り付けしようね」
子供達を相手に笑顔で話す美月に、参加している園児の母親の1人である山田さんが微笑みながら声をかける。
「美月先生、子供相手は自信ないなんておっしゃってたけど、慣れたものじゃないですかぁ。美月先生のレッスンって、なんだかゆる〜い空気が流れてて、安心感があるんですよねぇ。やっぱり子供もそういうのが分かるのかなぁ?」
「あはは、そうですか?そう言っていただけると嬉しいなぁ」
安心感とくすぐったいような誇らしさが、じんわりと美月の胸を満たしていく。
山田さんの言う通り、幼児向けのパンとお菓子のレッスンは、あれほど心配だったのが笑えるほどスムーズに進んでいた。
美月の仕事は、料理教室の講師だ。
といっても、調理の学校を出たわけでもなければ、料理に関する資格も何一つ持っていない。
子供のいない専業主婦としての退屈をしのぐため、趣味である料理のスキルを活かして、中目黒の自宅マンションのリビングでプライベートな料理教室を開催しているのだ。
”料理研究家”と名乗るには心許ない経歴の美月にとって、生徒さんたちからの賞賛の言葉は何よりも嬉しいもの。寄せられる期待には、なるべく応えたいと考えている。
そんな中で今日は、小さな子供を持つ常連の生徒さんからの強い要望を受けて、美月にとって初となる幼児向けのレッスンを開催しているのだった。
「うちはまだ子供がいないから、お子さん向けのレッスンの難易度とかが分からなくて。でも、みんな楽しんでくれてるみたいでよかったです!」
照れながらそう話す美月を見て、おそらく美月より少し年上のアラフォーママ・山田さんは、笑顔を浮かべたまま小首を傾げた。
「美月先生だったら今すぐにでも素敵なお母さんになれそうですよねぇ。ね、先生。もしお子さんができても、絶対絶対!お料理教室続けてくださいね!」
そうけしかける山田さんの後ろから、同じく子供の母親である小野さんが口を挟む。
「あら、山田さん。知らないんですか?美月先生はまだまだお子さん持つ予定無いんですよ。ね?先生?」
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