この愛のない世界で Vol.8

「別に、遊びじゃないから」西麻布の路地裏で強引に抱き寄せてくる男を、女が拒まなかった理由

昔は、もっと簡単に人を好きになっていた。
愛することなんて、当たり前のようにできていた。

でもいつからだろう・・・?恋をすることがこんなにも難しくなったのは。

この東京砂漠で、果たして本物の愛は見つかるのだろうか―?

「誰も人を好きになれない」と悩む倉松美佳(30)は、とりあえず“いい人”の鈴木次郎とデートしたが心は動かない。

その一方で、次郎とは正反対の遊んでそうな男・祥太郎から突然キスをされ戸惑い始める。そんな中、元婚約者の慶太の婚約を知ったのだが・・・


麻布十番にある、和食料理『暗闇坂 宮下』のカウンター席で、気づけば、本日2合目となる日本酒が既に空いていた。

「美佳さん、何かあったんですか・・・?」

隣に座る次郎が私のお酒のピッチの速さを心配してか、顔を覗き込んできた。

「あ、大丈夫です!すみません、ちょっと仕事で色々あって。ここ、美味しいですね!」

仕事で色々あって、というのは嘘だった。

私がこんなにも荒れている理由はただ一つ。先日、突然上がってきた元婚約者の結婚報告をFacebookで見てしまったからだ。

「そっか、美佳さんお仕事頑張っていらっしゃいますもんね!でも、仕事を頑張っている女性は素敵です!」

ニコニコと励ましてくれる次郎。その笑顔を見て、彼の人の良さにチクリと胸が痛む。

「次郎さんは、落ち込むこととかないんですか?」

いつも周囲に気を使ってくれて、優しい次郎。彼みたいな、太陽のように明るい人といると毎日平穏に過ごせそうだ。

「そうですねぇ。たまに落ち込む時もありますが、その時はサーフィンしたり運動したりして、頭をスッキリさせます!」

どこまでも人がよく爽やかな次郎に、私は思わず笑顔になる。本当に幸せになりたいなら、こういう人を選ぶべきだと私の心はまた揺らぐ。

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