この愛のない世界で Vol.4

「一番辛いのは、裏切られた私なのに…」。見知らぬ女に家庭を壊された妻が取った、夫への意外な態度

東京は、未婚率全国1位の独身天国。

人に深入りせず、きちんと自己防衛し、常に楽しさを求めること。それを守れば、この街では例えパートナーがいなくても毎日を楽しく生きられる。

しかしそんな刹那的な楽しさだけでは、満足できないこともある。私たちは時として、心の底から人との愛や絆を渇望するのだ。

「誰も人を好きになれない」と悩む倉松美佳・30歳もそのうちの一人。

昔は、もっと簡単に人を好きになっていた。
愛することなんて、当たり前のようにできていた。

でもいつからだろう・・・? 恋をすることがこんなにも難しくなったのは。

この東京砂漠で、果たして本物の愛は見つかるのだろうか―?

美佳とバーで出会った祥太郎が気になりつつも、通称アベレージ君と出会った美佳。その一方で、美佳の友人で幸せに見える既婚者の紗弥加も愛を探していた・・・?


既婚者・紗弥加の葛藤


—早く帰ってこい。


旦那から入ってきたLINEを見て、私は小さくため息をついた。

今日はせっかく久しぶりに美佳と葉月とご飯だったのに、旦那からの催促メールのせいでこの会はお開きだ。

「そろそろ帰ろうか。旦那から早く帰ってこいって連絡が来ちゃった」

そう言いながら、本当は家に帰りたくない気持ちを親友たちに悟られぬよう、そっと自分の中にしまいこむ。

「美佳、大丈夫だよ。いつかきっと、美佳にも大切な人が現れるから」

それは、美佳に言っているつもりで、もしかしたら自分に言い聞かせていたのかもしれない。


旦那の浮気に気がついたのは、半年前のことだった。

見慣れぬレシート、そして深夜帰宅した彼のスーツについていた、安っぽいラメ。

だけど、どうしてだろうか。

それを見つけた時の私は、不思議と落ち着いていた。

発狂することもなく、泣き叫ぶこともなく、ただただ、私は脱衣所で彼のスーツを見ながら呆然と静かに立ち尽くしていた。

私の唯一の居場所は、家庭。

それは名もしれぬ女によって、簡単に壊されたのだ。

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