無業の女王 Vol.5

初めての婚活で出会った、35歳こじらせ男との恐怖の一夜。急に態度を豹変させた、彼の正体とは

34歳、国立大卒の美しき才女、高木帆希(たかぎ・ほまれ)

「家事手伝い」という名の「無業」で10年もの間、ぬくぬくと過ごしてきた帆希に、突如、降りかかった「父の死」。

再び「社会」と向き合わざるを得なくなった帆希は、年下の彼氏・牧野涼輔の家に転がりこもうとするも別れを告げられ…

二子玉川の兄夫婦の元へと転がり込むも失敗…

大学時代の友人・瑞樹に援助を求めるも、モラハラ夫との歪んだ夫婦生活を垣間見た帆希が、次に選んだのは…?


「とにかく、新しい出会いを探してみたら?」

そう言って瑞樹が教えてくれたのが…マッチングアプリだった。

家事手伝いをしていた私でも、マッチングアプリの存在くらいはもちろん知っていたが…興味がなかったので詳しいことはわからなかった。

「マッチングアプリっていっても色んなアプリがあってね…」

瑞樹は、恋愛を楽しみたいだけのアプリや、真剣に結婚を考えた人だけが登録するアプリなど、色んなマッチングアプリを私に教えてくれた。

「34歳っていう年齢も考えたら、婚活重視のマッチングアプリが帆希にはいいんじゃない?」

私は、瑞樹に背中を押してもらう形で、「マッチングアプリ」に登録したのだ。

それが私にとって、次の一手だった―。



『僕も帆希さんと同じ、読書が趣味なんです!』

『私はミステリーや推理ものが好きなんです。土井さんは?』

『僕は、ちょっと照れくさいけど…恋愛小説が好きですね。特に足立由香とか、この前、急死した高木港一とか』

『そうなんですね…』

メッセージのやりとりを何度かしている土井さんは、年齢は私よりひとつ年上の35歳。職業は、渋谷区にある外資系IT企業のマーケティング事業部の管理職。

初めてマッチングした相手にしてみたら、正直、〝あたり″だ。

プロフィールにある写真で見る限り、ルックスも悪くない。最近テレビでよく見かけるバイプレーヤー俳優に雰囲気がよく似ている。パッとするオーラはないが、子犬のような愛嬌のある笑顔で好感が持てた。

趣味も読書と共通していて、さらには、父のファンだという…。そろそろ本人と会ってみたいと私は思っていた。

『土井さん…二時間ほどお茶でもしませんか?』

思わず私は、土井さんにメッセージをしていた。

―焦ってる女に思われるかな?

送信後に、ハッとした。こういうやりとりって、男性に誘われるのを待つべきなんじゃないかと…。

慌てて送信取り消ししようと思っても…出来なかった。

―完全に失敗したかもしれない。

男性との恋の駆け引きなんて何年ぶりだろう?涼輔と付き合う前に、多少、そんなことがあったとして…もう5年になる。

取り返しのつかない大きなミスに落ち込んでいた私に、ふと、土井さんからの新着メッセージが届いた。

『光栄です。ぜひ、お茶しましょう』

土井さんからの快諾メッセージに、私は久々にドキドキしていた―。

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