Who? Vol.6

人気男性タレントに近づく、女性記者の思惑。彼が必死で隠している“裏の顔”に迫る、女の執念

—この男は、誰だ?—

明晰な頭脳と甘いマスク、輝かしい経歴を武器に、一躍スターダムにのし上がった男がいる。

誰もが彼を羨み、尊敬の念さえ抱いていた。

だがもしも、彼の全てが「嘘」だったとしたら?

過去を捨て、名前を変え、経歴を変え、顔を変えて別人になり、イケメンジャーナリストとしての地位を手に入れた、レオナルド・ジェファーソン・毛利。通称『レオ』

レオの、秘密の過去を知る唯一の人物であり、芸能界の「女帝」と呼ばれる一条茜に出会ったのは15年前

ずっと秘密を共有していた茜が死んだことを境に、不可解な出来事がレオの周りで起こり始めるのだった…。


『のんきと見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がするー夏目漱石、「我輩は猫である」より ―』

―2019年、3月。新宿区市ヶ谷


「レオナルド・ジェファーソンと、夢に迷う若者?…の対談企画だと?須田ぁ…そんな甘っちょろい企画、俺が許すと思うのか?だいたい俺はあんなハーフに生まれたからって楽な人生送ってきた、ちゃらいイケメンが大嫌いなんだよ」

スキャンダルやスクープ記事を抜くことにかけては、おそらく日本で一番有名な雑誌「週刊 Truth」の編集部。

その編集長である田村がダミ声で怒鳴りつけているのは、先月配属されてきたばかりの須田歩(すだ・あゆみ)だ。

「本当の目的は対談ではありません。

対談はいわば偽企画といいますか、いや、全く偽の企画っていうわけでもないんですけど、彼が隠している秘密を暴いてスクープするための布石、といいますか…カメラの前でレオに懺悔させるといいますか…」

身長は190cm近く、柔道黒帯、影で「フランケン」と呼ばれている鬼編集長の剣幕に恐縮しながらも、歩は必死で主張を続けている。

「なんだよ、レオの秘密とか懺悔って。ますます意味わかんねーだろうが。ちゃんとわかるように説明しろ!」

フロア全体が震えそうなボリュームの編集長の声にも、ほかの編集部員達は見向きもせず、自分の仕事を続けている。

よく見れば皆イヤホンをつけており、それは編集長の怒鳴り声対策だ。歩は皆のイヤホンを確認したけれど念のため、嫌がる編集長を無理やり会議室に連れて行った。

あたりに人がいないことを確認してから会議室のブラインドを下ろし、小声で必死に決意を伝える。

「彼は、世間を騙し続けてきています。それに許されない罪を犯したかもしれません。私はある人からそれを聞いて…その後に人が一人が亡くなって…まだ、確証はないのですが…」

亡くなって、という単語に、ピクリと編集長が反応した。

「…その人って…もしかしてあの女帝のことか?」

声のトーンが変わった編集長に、歩は頷く。

「はい。その、一条茜さんです」

「情報はどこからだ?」

「すみません、まだ言えないんです。でも信用できる出元です。ただ慎重に動かないと、あのレオという狡猾な男の真実を暴けません。まずはあの男に信用されないと…。

必ずあの汚い男のスクープをとってみせますから、編集長、私に対談企画の許可をください!」

歩が豪快に頭を下げると、しばらく沈黙が続いた。

それを破ったのは、ドスの効いたダミ声だった。

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