2018.12.09
無業の女王 Vol.2年下の恋人の苦悩と本音
「別れたほうがいいと思うんだ…僕たち」
「………え?」
私は、一瞬、涼輔が何を言っているのか理解できなかった。
私の耳に入ってくるはずの言葉「結婚しよう」でなかったこと。更に、全く予想すらしていなかった「別れよう」の言葉に、私は瞬きすることも呼吸することすら忘れそうになるのだった。
「涼ちゃん、それって…どういう意味?」
全く涼輔の発する言葉の意味が解らなかった。
「私…お父さん亡くしたばかり…だよ?」
―正直、今の私に向かって言う言葉じゃないよね? あり得ないよね?
心の声をグッとこらえて私は涼輔の次の言葉を待っていた。
―冗談だって言って。今なら許すから。
「……ごめん……ずっと前から無理だなって思ってたんだ…ごめん」
「ずっと前からって…」
「僕たちを繋いでた高木先生も亡くなったし…こんな曖昧な関係もちゃんとした方がいいと思うんだよね」
「ちょっと待って…ずっと前に言ってくれたじゃない? 結婚を前提にって…あれ、嘘だったの?」
涼輔の顔が曇る。こんなこと言いたいわけじゃないのに…私は、涼輔に必死にすがっていた。
「帆希は頭もいいし、会うといつも楽しい。この5年本当にそうだった。でも…ひとりになると空しくなるんだ」
「どうして?」
「…帆希といても生産性がないんだよ…帆希の止まった時間に付き合ってる暇は…僕にはない…ごめん…」
涼輔の本音に、私は心が砕けそうになった。
―生産性のない私……。
言われてみればこの5年、腐れ縁のように、私と涼輔は関係を続けてきた…。
変化のない平穏な関係が心地よかったのは、私だけだった…。恥ずかしさと情けなさが身体中を駆け巡っていく。
目の前の涼輔は、無言で訴えかけている。
―僕の気持ちを察して、僕を手放してくれ、と。
「男と女じゃなく、これからは人として、時々会えたらと思うんだ…力になれることがあれば…」
涼輔の言葉がどんどん遠くなっていく。もっともらしい綺麗な別れの言葉の数々…いつの間に、こんなに交渉がうまくなったんだろう。
ー“力になれることがあれば”なんて言ってくれるなら、今すぐ結婚して私を養って!それが嫌ならお金をちょうだい!!
私は、心の中で、口が裂けても言わないようなみっともない気持ちを大声で叫んでいたのだった―。
◆
心というものは、不思議なものだ。
私は今、心が不感症になっていた。
父の死、遺言状…そして、恋人からの突然の別れ……。
何年もの間、穏やかに平和な暮らしをしていた私にとって、ここ最近、あまりにも衝撃的なことが次々と起こりすぎて…現実に心が置いてきぼりになっていた。
涼輔と別れて、一週間が過ぎた。
1週間前までは2ヵ月会っていなくても平気だったのに……今は、涼輔がいつどこで誰と会っているのか気になって仕方がない。
いつも以上にSNSをチェックするが、涼輔の投稿はなかった。
―きっと涼輔も私と同じくらい辛い想いをしているはずだ。
そう思うことで自分自身の心を宥めていた私に、更なる衝撃の事実を突きつけてくる人物がいた―。
しかし、どうやって働かずに、自分が変わらずに生きていこうか考えるなんて、本当に『グズ』だと思う❗(ハラスメントです)
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