無業の女王 Vol.2

働かずに生きてやる。彼に裏切られて人生最悪の日に下した、34歳・独身女の無謀な決断

年下の恋人の苦悩と本音


「別れたほうがいいと思うんだ…僕たち」

「………え?」

私は、一瞬、涼輔が何を言っているのか理解できなかった。

私の耳に入ってくるはずの言葉「結婚しよう」でなかったこと。更に、全く予想すらしていなかった「別れよう」の言葉に、私は瞬きすることも呼吸することすら忘れそうになるのだった。

「涼ちゃん、それって…どういう意味?」

全く涼輔の発する言葉の意味が解らなかった。

「私…お父さん亡くしたばかり…だよ?」

―正直、今の私に向かって言う言葉じゃないよね? あり得ないよね?

心の声をグッとこらえて私は涼輔の次の言葉を待っていた。

―冗談だって言って。今なら許すから。

「……ごめん……ずっと前から無理だなって思ってたんだ…ごめん」

「ずっと前からって…」

「僕たちを繋いでた高木先生も亡くなったし…こんな曖昧な関係もちゃんとした方がいいと思うんだよね」

「ちょっと待って…ずっと前に言ってくれたじゃない? 結婚を前提にって…あれ、嘘だったの?」

涼輔の顔が曇る。こんなこと言いたいわけじゃないのに…私は、涼輔に必死にすがっていた。

「帆希は頭もいいし、会うといつも楽しい。この5年本当にそうだった。でも…ひとりになると空しくなるんだ」

「どうして?」

「…帆希といても生産性がないんだよ…帆希の止まった時間に付き合ってる暇は…僕にはない…ごめん…」

涼輔の本音に、私は心が砕けそうになった。

―生産性のない私……。

言われてみればこの5年、腐れ縁のように、私と涼輔は関係を続けてきた…。

変化のない平穏な関係が心地よかったのは、私だけだった…。恥ずかしさと情けなさが身体中を駆け巡っていく。


目の前の涼輔は、無言で訴えかけている。

―僕の気持ちを察して、僕を手放してくれ、と。

「男と女じゃなく、これからは人として、時々会えたらと思うんだ…力になれることがあれば…」

涼輔の言葉がどんどん遠くなっていく。もっともらしい綺麗な別れの言葉の数々…いつの間に、こん......


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