
独身オンナが黙ってない:「ただ、結婚してないだけなのに…」。33歳女を待ち受ける、独身ハラスメント
「これが、噂の独身ハラスメント?」
急遽、主要メンバーがミーティングルームに招集された。
「来年から、通常のコレクションとは別に、ブライダルラインを立ち上げる予定なの」
「ブライダルですか…!」
その場が興奮でどよめく。社長は皆の顔をゆっくりと見回していたが、莉央のところで視線を止めた。
「それで、ブライダルラインの立ち上げは、莉央に一任しようと思ってるの。莉央は前職でも確か新ブランド立ち上げの経験があるし、頼りにしてるわ。莉央、やってくれるわよね?」
当然、莉央にとっては願ってもないチャンスだ。莉央が「はい、もちろん!」と威勢の良い返事をしようとしたときだった。
「社長、お言葉ですが…」と言って口を挟んだのは、新卒からこの会社に勤めており、現在8年目の優子だ。
「莉央さんは今の業務でかなり忙しいですし、通常コレクションに支障をきたすのは、ちょっと…ねぇ?」
優子は周りの皆に「そうよね?」と同意を求めると、勝ち誇った顔で莉央を見やった。
「それに…。来年にむけて、リサーチの時間もあまりないですよね。莉央さんは、ブランド立ち上げの経験はあっても…」
そこまで言いかけるとわざとらしく言葉を濁し、不敵な笑みを浮かべる。
「なんていうか、ウエディング関係にはちょっと疎いのではないかと。ねえ、莉央さん。トレンドとか、ご存知です?」
—優子さんたら、“ブランド立ち上げの経験はあっても”の後、何を言いかけたワケ?もしかして、独身の私には、この仕事は相応しくないとでも言いたいのかしら?
そう言えば優子は、1年前に結婚したばかりだ。
しかし、莉央だって婚約破棄はされたものの、式直前まで準備に勤しんでいたのだ。
ウエディングドレスだって、何軒もショップをハシゴして納得がいくまで試着したし、ドレスやジュエリー、最新のウエディング事情の研究には仕事なみのパッションをつぎ込み、プロ顔負けのレベルにまで知識を深めた。
「いえ、足りない部分は勉強で補いますし、責任を持って務めさせていただきます。ありがとうございます」
こちらを睨みつける優子の視線にひるむことなく、莉央は毅然とした態度でそう言って、にっこり微笑む。
優子の苛立ちを帯びた表情にぞっとして顔をそむけると、亜樹と目があった。そのとき、1ヶ月前に亜樹が口にしたあの単語が、とっさに頭に浮かぶ。
—独身ハラスメント…。
そして今、莉央をまっすぐ見つめる亜樹の目は、「だから言ったでしょ?」とでも言わんばかりだ。
莉央は、これから恐ろしい戦いが始まるような気がして、拳をぎゅっと握りしめたのだった。
▶Next:10月29日 月曜更新予定
既婚女子からの攻撃がついに本格化。そして莉央には新しい出会いの予感…。
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この記事へのコメント
未婚だろうが既婚だろうが、若かろうが高齢だろうが、人としての魅力は各自個人差ありまくり。簡単に線引きできないよ。