ふぞろいな駐妻たち Vol.11

女狂いの末、会社から“強制帰国命令”を下された駐在男の末路。そのとき、妻が下した決断は…

駐妻【ちゅうづま】―海外駐在員の妻。

数多の平凡な妻の中で、一際輝くステータス。

駐妻ワールド。そこは華麗なる世界か、堅牢なる牢獄か。


夫・彬の赴任に伴い、タイ・バンコクに来た里香子。そこではかつての留学仲間・ケイと雪乃に再会する

里香子は日本にキャリアを置いてきてしまったことへの葛藤から、彬と口論となり、はじめて夫婦仲に危機が訪れた。

一方、夫・仁志の女遊びに悩む雪乃は、夫の醜態がSNSで晒されている事実を知ってしまう。そしてケイは、タイ人彼氏の存在を隠してしまうことや、雪乃の夫の浮気を自分が暴いてしまったことで、自己嫌悪に苦しんでいた。


「風が気持ちいい…水辺っていいね」

里香子は欄干に立って、後方で立ち止まっている彬を振り返った。

口論をしてから2週間。お互い冷却期間を置いたほうがいいという阿吽の呼吸で、二人は核心に触れる会話を避けてきた。

昨夜、固い表情の彬から、明日の夜"アジアティーク"で食事しないかと誘われたとき、里香子はきちんと話し合うときだと思うと共に、その場所のチョイスを少し不思議に思った。

アジアティークは、東京でいえばお台場のような場所。新しいスポットで、チャオプラヤー川沿いを再開発した、観光客にも人気のエリアだ。

美味しいレストランやブティックがマーケットの雰囲気を模して立ち並び、ナイトスポットとして注目を浴びている。

はっきり言って、彬の好みの場所では、全然ない。

昼間にこの辺りをひやかし程度でぶらついたことはあれど、夜景と夜風が堪能できる時間にこうして滞在するのは初めてだ。里香子は巨大縁日のような場所で、少しずつ心がほぐれていくのを感じていた。

おそらく彬は、里香子が好きそうな開放的な場所を必死で考えたのだろう。

「里香子…今までごめん。里香子の気持ちを、まったく理解しないで自分の都合を押し付けた」

唐突に、思いつめた様子で、彬が欄干にもたれる里香子の横に立った。そして里香子が口を開くまえに、緊張しながら彬は言った。

「里香子、一人で日本に帰って」

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