ふぞろいな駐妻たち Vol.7

「全てを手放して貴方についてきたのに…」元キャリア妻の苦悩と、ついに壊れ始めた駐在夫婦の仲

駐妻【ちゅうづま】―海外駐在員の妻。

数多の平凡な妻の中で、一際輝くステータス。それは期間限定のシンデレラタイム。 そして普通の女に与えられた「劇薬」。

共通点はただ一つ、夫について、海外で暮らしていること。

駐妻ワールド。そこは華麗なる世界か、堅牢なる牢獄か。

夫・彬の赴任に伴い、タイ・バンコクに来た里香子駐妻たちのマウンティングに意気消沈しかけ、会社の奥様会でも違和感を覚えるが、バンコクで働く友人ケイと、同じく駐妻の雪乃に励まされる日々。

一方、友人の雪乃は、夫・仁志が「女連れで空港にいた」とケイからの目撃情報が入ったことをきっかけに、夫の女遊びを知ってしまうのだった。

そして里香子も、念願の昇進を果たした夫・彬に言われた言葉がきっかけで、ついに抑えていた感情があふれ出す―。


「私は、友達もキャリアも全部東京に置いてきたのよ、前と同じでいられなくて当たり前じゃない…!」

気がついたときには、里香子は声を荒げ、そう口走っていた。

昇進の報告とともに彬の口から放たれた、「東京にいた頃みたいに頑張れ」という言葉。その無神経な一言に、里香子の自制心は軋みはじめていたのだ。

「里香子…?」

「わかってる、視野が狭いっていいたいんでしょ。でも仕方ないの、今はこの狭い世界に、私は住んでるの」

バンコクに着いてからの、たいしたことない、相談するほどではないと、心に押し込んできた不安やストレスが、急速に形を成していた。

「里香子。落ち着こう」

彬は小さい子をなだめるように、里香子の両肩に手を置いた。

「話を訊くから、整理しよう。今里香子が怒ってるのは、俺のこと?それとも奥様会で何かあったの?」

こんな時まで冷静沈着な彬。里香子はそれが、かえって自分と夫の心の乖離のようで、悲しかった。

「あなたのことよ。いつも上から目線で、頑張れとか、ああしろこうしろ、机上の空論。いいわよね、自分はバンコクに来たって自分の土俵で勝負できて。

私なんて手持ちの武器は全部取り上げられて、こんなとこに放り込まれて、それで前みたいに頑張れ?冗談じゃないわよ」

「上から目線?俺が?」

彬が心底驚いているのが、声音で分かった。

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