ふぞろいな駐妻たち Vol.8

「私とあの女達の何が違うの?」駐妻になれなかった独身女の嫉妬。親友に夫の不貞を密告した本当の理由

駐妻【ちゅうづま】―海外駐在員の妻。

数多の平凡な妻の中で、一際輝くステータス。それは期間限定のシンデレラタイム。 そして普通の女に与えられた「劇薬」。

共通点はただ一つ、夫について、海外で暮らしていること。

駐妻ワールド。そこは華麗なる世界か、堅牢なる牢獄か。


夫・彬の赴任に伴い、タイ・バンコクに来た里香子駐妻たちのマウンティングに意気消沈しかけるも、バンコクで働く友人ケイと、同じく駐妻の雪乃に励まされる日々。

里香子は、念願の昇進を果たした夫・彬に言われた言葉がきっかけで、家を飛び出してしまう。そしてバッタリ会った駐妻仲間のさりげない優しさに触れるうちに、頑なで未熟だった自分の一面を自覚するのだった。

一方、友人の雪乃は、夫・仁志が「女連れで空港にいた」とケイからの目撃情報が入ったことをきっかけに、夫の女遊びを知ってしまう。

そしてその頃、独身のケイはー。


「ありがとうございました、またよろしくお願いしますね」

ケイは豪奢なスパのエントランスで、会社の車に乗り込む2人の駐妻を笑顔で見送った。

ドライバーで恋人のアナンは、ケイに嬉しそうに目配せしてから、後部座席のドアを慎重に閉める。そして小走りで運転席に戻ると車を発進させた。

以前、「私と付き合っていることは内緒に」とケイが言ったことを、アナンは忠実に守っているのだ。

特に、日本人向け情報誌の編集者であるケイが、読者モデルとして協力を仰いでいる駐妻たちには絶対に知られたくなかった。だから、どこかほっとしている。

そこには屈折した思いがあることを、ケイは最近自覚し始めていた。

―戻ってスパの記事、書かなきゃ。

エントランスにあるスタバでコーヒーを買うと、ホテルから徒歩圏内のオフィスに向かう。ちょうど帰社すると同時に、スコールが降り始めた。

排水機能が弱いバンコクは、激しい雨が数日続くと街が水没してしまう。煌びやかで近代的なショッピングモールが乱立する中で、インフラのレベルはまだまだ日本には遠く及ばない。

そのアンバランスさが、この国の光と影を象徴しているように思う。暮らす者にとって、楽園であると同時に、戦う場所。

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