“ゆとり”のトリセツ Vol.5

“ゆとり”のトリセツ:「それなりの努力でそこそこ幸せ」じゃダメなの?成功者の昔話に感じる、ゆとりのジレンマ

バブル崩壊後の低迷する日本を生きてきた“ゆとり世代”。

諸説あるものの、現在の20代がこの世代に当たるとされる。

外資系コンサルティングファームに勤める瑞希(26歳)も、まさに典型的な“ゆとり”。

高学歴、高収入、容姿端麗。誰もが羨むハイスペにも関わらず、その実態は信じられないほど地味だ。

趣味はNetflix、たまに港区おじさん・水野と出かけるのは庶民的な餃子屋。

会話の弾みで会社の先輩から紹介されてしまったゆとり世代男子・福永と渋々デートした瑞希。しかしまさかの割り勘を要求され、恋愛には更に後ろ向きに...。

そして今週は、団塊ジュニア世代・水野とデートの約束があった。


「…黒以外の服も着るんだね」

コの字型カウンターの真ん中に案内され席に着くと、隣で水野が目を細めた。

瑞希が『フロリレージュ』を訪れるのは、今日が初めてだ。

グレートーンでまとめられた広いオープンキッチンには花が生けられ、本来無機質なはずの空間に柔らかい彩りを加えている。

キッチンできびきびと無駄なく動き回るスタッフ達が、水野に目を止め、軽く会釈した。どうやら彼は、常連らしい。

「餃子食べる時はシミになるので黒着るようにしてますけど、一応他の色の服も持ってます」

「合理的だね。良かった、ナプキンのある店に誘ってみて」

ざっくりとした淡い水色のタートルネックに白いウールの台形スカートという組み合わせは、瑞希のクローゼットの中では数少ない“よそゆき”だ。

正直に言うと、今日どういう恰好で来たものか、むしろどういう顔をして来ようかすら悩んだのだが、リクエスト通り、最大限"デート仕様”にしておいた。

先週の福永とのデートには準備に15分しか時間をかけなかったものの、毎週会っているはずの水野に改めてデートと言われると、なんだかんだ鏡の前で30分近く右往左往していた自分を思い出す。

しかし隣の水野はといえば、濃いカーキのモックネックニットに落ち着いたジーンズ、スニーカーと、極めていつも通りの装いだ。

―なんだ、ちょっと悩んでバカみたい。

どこかで少しがっかりしている自分に気付き、瑞希は内心苦笑いした。

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