新婚クライシス Vol.13

「結婚向きではない」と自覚した自己中夫。愛だけでは歩み寄れない、不器用夫婦の確執

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

二人は “新婚クライシス”に陥り夫婦仲はギクシャクしたままついに別居してしまう。そして英里は、後輩・新一から思わぬ告白をされてしまった。


凍てつくように寒い夜の銀座を、英里は逃げるように足早に歩いていた。

都会のど真ん中とはいえ、この季節は酷く冷え込む。さらに雨まで降り出したから、手足はじんじんと痺れるような痛みすら感じた。

急いでタクシーを捕まえようとするが、必死に手を振り上げても車は虚しく素通りしていく。夜の銀座には、何らかの規制があるようだ。

―僕、英里さんが好きですー

切羽詰まったような新一の声が、耳から離れない。

頭が完全に混乱し、動揺で呼吸が荒くなった。だがその一方で、英里自身も彼との関係が単なる会社の後輩・先輩を超え始めている気配は薄々感じていたのだ。

しかし新一に抱きしめられたその瞬間、英里は自分の本心に気づいてしまった。

あのとき、驚きと焦りの中で頭いっぱいに浮かんだのは、他ならぬ吾郎の顔だった。

―私、本当に最低...。

大通りでやっと捕まえたタクシーの中で、英里は寒さでカタカタと震える手でスマホを取り出した。

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