新婚クライシス Vol.12

「部屋に行ってもいいですか?」孤独に苛まれた別居夫婦を襲う、家庭外の甘い誘惑

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

二人は“新婚クライシス”に陥るが、英里はそんな中、「子どもが欲しい」と宣言する。だが夫婦仲はギクシャクしたまま、二人はついに別居してしまう


吾郎が家を出て行ってから、数日が経過した。

カチャっと自宅のドアの鍵を開けるたび、英里は胸が軋むような痛みに襲われる。

もともと無駄なモノの少ない彼の部屋は、家主の不在によりさらに無機質さを増している。夫と離れるのは、予想を上回る寂しさがあった。

あれほどすれ違いの日々を苦しいと感じていたのに、本当に一人になった今、英里が感じるのは途方もない孤独感だ。

着替えのためにクローゼットを開けると、そこは以前よりがらんとスペースが余っており、つい溜息が漏れる。英里のいない間に、吾郎が服やスーツを持ち出したのだ。

新婚夫婦が住むには、クローゼットも小さく少し不便だと思っていた部屋。しかし一人になると、今度はやけに広く感じる。

だが、いくら寂しくても、何も解決しないまま吾郎と元に戻るのは躊躇われたし、かと言って、本気で離婚に踏み切る覚悟が自分にあるかどうかも疑問だった。

—本当にダメな女だな、私...。

身動きが取れずに自己嫌悪に陥る英里に、一通のメールが届く。

—英里さん、相談があるんです。お時間作ってもらえませんか?—

その送り主は、咲子に苦言を呈されてから接触を避けている、後輩の新一だった。

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