新婚クライシス Vol.5

新婚クライシス:“理想の父親”へ変貌を遂げた元彼との衝撃の再会。私の選択は、まちがいだった?

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

二人はとうとう “新婚クライシス”を迎え夫婦のすれ違いは深まる。そんな中、英里は赤ん坊を連れた元彼・きんちゃんに偶然再会した。


―きんちゃん、うそ......。

英里の目は、抱っこ紐で赤ん坊をぶら下げた元恋人・きんちゃんの姿に釘付けになる。短期間ではあるものの、かつては結婚話まで浮上し、同棲までしていた男。

「...二人とも、久しぶり」

英里と咲子同様、きんちゃんも偶然の再会に驚いた顔をしつつも、黒目がちでつぶらな瞳がニコリと細まる。頬のふくよかさは相変わらずで、笑った顔には可愛いえくぼが浮かんだ。

「き、きんちゃん......ねぇ、いつの間に......?」

言葉を失った英里の代わりに、咲子が震え声で問う。

―別れて1年も経たないのに、もう赤ちゃんなんて......。

元彼であるきんちゃんが赤ん坊を抱いた姿はとにかく衝撃が大きすぎて、英里は動揺を隠せない。

あれほど自分を大切にしてくれたのに、きんちゃんでなく吾郎を選んだのは英里自身だ。その決断を後悔したことはないし、未練があったわけでも決してない。

しかし、まさに良き父親の典型例のような彼の姿は、英里が漠然と想像する“幸せな家庭”の理想の父親像にピタリと重なったのだ。

「実は......」

きんちゃんは困ったような笑顔で口を開く。その表情が懐かしい。

英里はその先を聞きたくなくて、耳を塞いでしまいたい衝動を必死で堪えた。

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