LESS~プラトニックな恋人~ Vol.3

LESS~プラトニックな恋人~:私と抱き合えなくて、あなたはどうして平気なの?

今、東京の男女が密かに抱えている悩みがある。

恋人や夫婦間での、肉体関係の喪失だ。

この傾向は、未婚の男女においても例外ではない。

化粧品会社でPRをしている美和子は、某大手損保企業に勤める健太と恋に落ち、同棲を開始。

相思相愛、周りも羨むお似合いカップルの二人だが、同棲1年が経つ頃、不完全燃焼の夜を境にして“プラトニックな恋人”となっていく。

−私たち、このままでいいの?

美和子の心で燻る不安に、女子大時代の友人・杏奈の言葉が火をつけた。


密室の、ベッドで


「健太…もう、寝てる?」

寝室に入ると、ベッドから気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。

疲れているのだろう。近くに寄っても気配に気づく様子はない。

健太の寝顔は無防備で幼く、まるで子どもみたいだ。

彼の傍に腰かけ、出会った頃より丸みを帯びた頬にそっと触れた。そして私は試すように、唇を近づける。

「美和子…?どうした?」

ようやく目を覚ました健太が眠そうに呟くのを無視して、私はそのまま彼の唇を吸う。

健太はそんな私を受け入れ、応えては、くれた。…けれど、次の瞬間、私たちはどちらからともなく照れ笑う。

密室のベッドで恋人同士が唇を重ねているというのに、身体の奥底から湧き上がるような衝動も、胸を締め付けられるような激情も、私たちには起きない。

私たちは、男と女のはずだ。それなのに、動物的に欲望を曝け出し官能に乱れることが、恥ずかしく思えてしまう。

−抱き合えない男と一緒にいる意味、ないでしょ?

私の頭を優しく撫でる彼の胸に顔を埋めていると、また杏奈の言葉が思い出され、私は息が苦しくなって健太から離れた。

そしてそのとき彼はもう、静かに夢の中に戻ってしまっていた。

こんな思いをしているのは、私だけなのだろうか。健太は、私と抱き合えなくて平気なの…?

心に浮かぶその疑問は、月日の経過とともに疑惑へと姿を変え始めている。

あの時…杏奈は私に、続けてこうも言ったのだ。

「男が彼女と“しなくなった”時は、絶対に外で“してる”の。男が誰ともしてないわけ、ないんだから」

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