アモーレの反乱 Vol.3

アモーレの反乱:15歳年下妻の言い分。幸せな結婚生活に突然割り込んできた、夫の昔の恋人

港区在住。遊びつくした男が、40歳で結婚を決意。

妻には、15歳年下で、世間知らずな箱入り娘を選んだ。なにも知らない彼女を「一流の女性」に育てたい。そんな願望もあった。

誰もが羨むリッチで幸せな結婚生活を送り、夫婦関係もうまくいっていたはず…だったのに。

世間を知り尽くして結婚した男と、世間を知らずに結婚してしまった女。

これは港区で実際に起こった、「立場逆転離婚」の物語。

利奈(りな)は理由も言わずに突然、夫・昌宏(まさひろ)に離婚を切り出した。離婚したくない昌宏には話し合いを求められるが、利奈は弁護士を通しての話し合いを要求し、昌宏には自宅を出てホテル暮らしをしてもらうことになった。その頃妻は…


もしも「あの女性」が私の前に現れなかったら、こんな日はこなかったのだろうか?

私は、元麻布の3LDKのマンションで、出て行くための荷物をまとめながらそんなことを考えていた。

片づけ始めて改めて気が付いた。この家に、私が選んだものはほとんどない。

4年間暮らした家なのに、寂しいという気持ちが全く湧かないことに、我ながら驚く。

夫…あの人に買ってもらったものは、何一つ持っていくつもりは無い。だから、運び出す荷物は、ほんの少しの衣服とアクセサリーだけ。

身軽なものだった。

ホテル暮らしをすると言った夫は、律儀に戻ってこない。

一度も返信していないのに毎日LINEはくるが、食事は食べた?今何してる?など、当たり障りのないものばかり。

とても離婚の危機にある夫婦のやりとりとは思えない。

まあ、今更、驚きもしないけど…。

大体、本気で話し合いたい、と言うのなら、どんなに私が嫌がろうと強引に帰ってくればいいのに。どうせまた「きみの気持ちを尊重している」とでも言うのだろう。

彼の言いそうな台詞を想像しただけで、白けた気持ちになり、溜息がこぼれた。

あの人は、面倒を嫌う人だ。

喧嘩をして、あがいて、ここに居座るような「みっともない」ことはしない。

私のために、感情をむき出しにすることなんて、事実この4年間一度も無かった。だが、あの日。

私が離婚を申し出て、家を出て行くと言った時初めて、あの人の感情が揺れる所を見た。荒ぶった声を聞いた。

あんな時におかしいけれど、彼が私の手をつかんで声を荒げたあの一瞬…

私は泣きそうになっていた。悲しかったからでも怖かったからでも、ましてや思いのほか強い力で掴まれた手首が痛かったからでもない。

嬉しかったのだ。自分が彼の理性を、初めて崩せたことが。

けれど彼の爆発は、ほんの一瞬で収まってしまった。

水の入ったグラスを持つ彼の手はまだ震えていたけれど、いつもの「落ち着いたあの人」の仮面をかぶってしまった。

もっと怒鳴り散らしてほしかった。感情をむき出しにして、問いただして欲しかった、なんて思う私はおかしいのかもしれない。

でもそんな感情を夫に対して抱くようになったのも「あの女性」に出会ってしまったから。

私の前に「あの女性」が突如現れたあの日をきっかけに、全ては始まり、変わっていった。

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