2017.04.21
SPECIAL TALK Vol.31理系ベンチャーが育たない日本の土壌
金丸:シリコンバレーをはじめ世界では理系出身者が活躍し、ビジネス界をリードしています。しかし日本は世界に比べて、理系があまり目立たない。自分たちの価値を見出していないという気もします。
松尾:本当にそうですよ。私は研究室に入ってくる学生の一人ひとりに、会社を作らせようかと。30社ぐらい作れば、日本も結構変わるんじゃないかと思って。
金丸:いいですね、どんどんやってください。香港では両親が子どもに会社をプレゼントしますから。「お前は今日から社長だから、何やるかは自分で決めろ!」って。
松尾:それは、いいですね。
金丸:日本も大学の理系学部が、意識を変えなくてはいけません。理系学部の就職先って、設計などに配属されるのはほんの一握りで、大部分は生産管理部門に配属されます。イノベーションを起こせるはずの人材が、その才能を発揮できる場を与えられないまま、管理職についてマイホームを建てて、でもそこそこの生活を送れるもんだから満足してしまっている。
松尾:小さくまとまっちゃってる感じですよね。高度経済成長期にはそのやり方が合っていたのかもしれませんが、今はもうそういう時代じゃない。戦う相手は世界です。正直なところ、日本は将棋でいう〝投了〞寸前だと思っています。
金丸:そこまで言い切りますか(笑)。でも日本企業の競争力が低下しているのは事実です。世界の企業の時価総額ランキングをみると、2006年のトップ10は、GEやBPといった製造業や石油メジャーが占め、日本からは唯一トヨタが食い込んでいました。しかし、2017年(2月発表)はトップ10のすべてをアメリカ企業が独占し、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックといったIT企業の台頭が目立ちます。この10年で勢力図ががらりと変わり、日本はアメリカに大きく差をつけられました。
松尾:だから、ディープラーニングという新しい技術が出てきた今こそ、日本企業が再び競争力を取り戻すチャンスなんです。
金丸:松尾先生は、日本は今後どのように戦っていくべきだとお考えですか?
松尾:日本が世界で存在感を示すには、3つの道があると思います。ひとつは、ディープラーニングで世界と戦う道です。日本の強みであるものづくりとAIは非常に相性がよくて、ディープラーニングをロボットに組み込んでいけば、これまで人間が目で見て判断しなければならなかった作業を、すべて自動化できるようになります。
金丸:具体的にはどういう分野なのですか?
松尾:農業や建設業、外食産業といった分野ですね。たとえばトマトを収穫するという作業は、トマトが熟しているかどうかを判断し、トマトの位置や形を確認して傷つけないようにもぎ取らなければいけません。人間には簡単でも、これまでの画一的な作業しかできないロボットには無理でした。それがディープラーニングを活用すれば、ロボットでも一つひとつのトマトに合わせた対応ができます。トマトは世界中で栽培されているので、大きな市場が見込めるのです。
金丸:なるほど。
松尾:ふたつ目は、翻訳です。自動翻訳の精度が上がって言葉の壁がなくなった瞬間、日本は変わります。
金丸:それはどういうことなのでしょう?
松尾:英語圏の情報が日本語と同じように入ってくるようになれば、世界中の人とのコミュニケーションが一気に増えますよね。そうやって世界の現状を知れば、今まで日本では当たり前だと考えていたことが、世界では当たり前でないことに気づいていくはず。そうしたズレを軌道修正しながら、世界の時流に乗っていくという道です。最後は、日本という国を飛び出して、世界を活躍の場として生き延びるという道。日本人は順応性も適応力も高いので、世界中のどこでも生きていけるのではないでしょうか。
金丸:私も日本人はもっと海外に出ていくべきだと思っています。とくに若い人たちには失敗を恐れず、リスクをとって海外で勝負してほしいですね。
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