2017.04.21
SPECIAL TALK Vol.31自分という主体が消えることへの恐怖。哲学書を読み漁った高校時代
金丸:中学時代はどんな少年だったのでしょうか?
松尾:そうですね、部活は野球をしていました。
金丸:意外ですね。
松尾:草野球をしていたので、その流れで。でも筋力がないんで「2番セカンド、送りバント」みたいな感じでした。あと中学生の頃は、「死ぬのが怖い」ってめっちゃ思っていました(笑)。
金丸:えっ? それはお父さん、お母さんが先に死んじゃうのが怖いとか?
松尾:いや、そうじゃなくて、こうやって考えている〝自分という主体〞がなくなることが怖かったんです。だって自分が死んだら、いま考えていることもすべてなくなるわけでしょ。そう思うと、いま自分が世界を認識していること、こんなふうに考えていること自体が、奇跡的なんじゃないかと思って。
金丸:思考のプロセスとかロジックが、今とあんまり変わらないですね(笑)。
松尾:言われてみれば、この頃から基本的に変わっていないかもしれません(笑)。「死」については、高校生のときもずーっと考えてて、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインとかいろんな哲学書を読み漁っていました。自分って何だろう、と常に自問自答して……。
金丸:それで答えは出たんですか?
松尾:それが、ますます意味がわからなくなりました。でも結局、人間が考えたり認識できたりするのは、生きているからこそであって、それを追究し続けても限界があるということに気づいたんです。だからコンピュータというものに、すごく魅力を感じましたね。コンピュータは「認識」するという行為を科学的に追究できる分野で、無限の可能性を秘めているなって。それで、この道に進もうと決めました。
金丸:このときの葛藤が、今につながっているんですね。
データ分析に傾倒し、ゲームで成功体験を得る
金丸:高校の頃は、やはり勉強一筋だったんですか?
松尾:いやいや。県立丸亀高校という進学校に進んだんですけど、授業はあんまり聞いてなかったです。人の話を聞くのがすっごく苦手で、授業が始まるといつの間にか空想にふけってしまって、はっと気づいてはまた違うことを考え始める、ということの繰り返しでした。
金丸:先生の話を聞かないっていうのは、私と一緒です(笑)。
松尾:勉強よりも、当時はゲームにのめり込んでました。X68000っていうパソコンの「大戦略」という戦争のシミュレーションゲームなんですけど。
金丸:知ってますよ。このゲームにハマった人がたくさんいましたから。
松尾:私も友達に誘われて、1日1ターンでフロッピーをやり取りしてゲームをやってたんですが、向こうはやり尽くしてるから、とにかくうまくて。どうやっても歯が立たない。負け続けるのが悔しくって、どうすれば勝てるかなあと。それで多少はプログラムをいじれたので、ファイルをのぞいてみたら、なんとなく攻撃力とか守備力とか兵器のパラメータらしきものを見つけて。で、いろいろ観察しているうちに「自分の攻撃力」×「相手の守備力」で何機倒せるか決まっていることがわかったんです。そこからは「攻撃力÷守備力=戦闘力」というオリジナルのパラメータをつくって、さらに「戦闘力÷値段=お買い得度」というパラメータをつくって、どの兵器が最もコスパがいいかを調べました。すると、一番安い戦車が一番お買い得だとわかりました。たった100円の。
金丸:完全にアナリストですね(笑)。
松尾:で、100円の戦車を量産しまくって戦ったら、圧勝しちゃって。友達はすっごい悔しがってました。
金丸:「100円の戦車に負けるなんてー」って(笑)。
松尾:そう(笑)。「大戦略」って、お金が貯まってくると高い兵器を買いたくなるんですよ。だから、みんな高い戦車を買うんだけど、実はそれはダメで。一番安い戦車を大量にそろえることが、勝利への近道だったんです。
金丸:データ分析によって、その解を導き出したわけですね。
松尾:このときに思い込みじゃなく、データをしっかり分析することの大切さを知りました。これが私の原体験になっているのかもしれません。
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