2016.11.21
SPECIAL TALK Vol.26東京大学に入学環境問題を憂い、農業の世界へ
金丸:楽しい高校生活のあとは、東京大学農学部に進学されます。そのまま慶應義塾大学に入れるのに、なぜ東大を受けたのですか?
加藤:私、すごく幼稚なところがありまして、たまたまテレビで見た『ドラえもん』が環境問題に関するストーリーをやっていて、「このまま環境汚染が進んだら、地球から酸素がなくなってしまう」と本気で思ったんです。環境破壊のせいで植物が生えなくなり、やがて人間が地球で暮らせなくなると。それで、環境問題を解決できる研究者になろうと思いました。
金丸:突飛な考えですね……。
加藤:今思えばそうですけど、当時はいずれ食糧難がくるのが怖くて、自分にできることから始めようと真剣でしたね。それで慶應には生物系の学部が医学部しかなかったので、東大を目指したんです。
金丸:じゃあ大学では、迷わず環境問題や食料問題を専攻されたのですか?
加藤:もちろんです。ですが環境というテーマは大きすぎるし、私自身は数学が得意だったので、環境全般から食料生産を向上させる農業機械の勉強にシフトしていきました。
金丸:農業機械というのは?
加藤:農業ロボットです。植物工場のような〝農業の自動化〞にすごく興味があって、大学では、雑草だけを探し出して焼き切るロボットアームの研究をしていました。卒業後、イギリスのクランフィールド大学に留学したんですけど、そこである先生から「NASAのプロジェクトに参画しないか」とお誘いいただきました。
金丸:それはすごい。どんなプロジェクトだったのですか?
加藤:宇宙ステーションに搭載する植物工場のプロジェクトです。研究拠点がアメリカの3つの大学に割り振られていて、私はニュージャージー州立大学に配属されました。当然のことなんですが、宇宙には重力がないので、植物の根っこは下に生えません。プロジェクトの研究も、そこからのスタートでした。
金丸:根が下に生えない問題を、どう解決されたのですか?
加藤:それが解決できないんですよ、重力がありませんから。では、どうすればいいかということで、私が担当したのは、宇宙ステーションで途切れることなく食料を生産するプロセスをJAVAで組むというものでした。宇宙での植物生産システムを構築するために、数千キロ離れた大学のチームが電話会議やITツールを駆使して、クラウド上でプログラミングを行い、共同で研究を進めていました。今のようにインターネットやウェブ会議システムが発達していない時代ですから、こういう最先端の環境で仕事ができたのは大きかったですね。
金丸:とても貴重な経験ですよね。
加藤:でもお世話になっていた教授がオハイオへ異動になり、さすがに「オハイオまではついていけないな」と、参画から半年で日本に戻ることにしました。
結婚を機に静岡へ。エンジニアとして結果を残す
金丸:帰国後は、どうされたのですか?
加藤:2000年に戻ってきてすぐキヤノンに就職したのですが、結婚を機に退職し、主人の実家がある静岡に引っ越しました。主人の親族が産業用機械メーカーを経営していて、私もそこの社員になりました。
金丸:具体的には何をされていたのですか?
加藤:研究開発のリーダーです。歯車などを使って回転速度を落とす減速機を製造していて、その部品のひとつである三次元形状のカム(機械の運動方向を変える機械要素)を開発していました。この世界って、まさに数学の塊なんですね。数値解析や制御のための新しいアルゴリズムを作り、世界一の精度を誇るカムを開発しました。
金丸:世界一ですか! どこでも結果を残されているのが、加藤社長のすごいところです。
加藤:いえ、そんなことないです。ただ、仕事にはやりがいを感じていたんですけど、子どもが小さかったこともあり、いったん会社を離れたんですね。それで自分はいったい何がしたいんだろうって立ち止まって考えたとき、「やっぱり農業がしたい」と改めて思いまして。
金丸:そこから一気に起業へ舵を切ったんですね。
加藤:そうです。ちょうど地元の大学で、農業を始めたい人向けの社会人講座があり、半年間通いました。そしたら農業の世界というのは、独自の商習慣がまかり通っていて、契約書さえない。これは変えがいがあるなと思いましたね。それで2009年に起業し、本格的に農業に足を踏み入れました。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
2024.01.19
Vol.112
~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~
2023.12.21
Vol.111
~いつだって新しい人に出会いたい。シンプルな好奇心が新たな交流を生んだ~
2023.11.21
Vol.110
~自分が飲みたい日本酒で世界に挑戦し、日本酒業界に革命を起こしたい~
2023.10.20
Vol.109
~世界で一番愛される字を書きたい。世界を舞台に活躍する書道家へ~
2023.09.21
Vol.108
~ピアノや音楽をもっと自由に、多くの人が慣習にとらわれず楽しんでほしい~
2023.08.21
Vol.107
~未曽有の事態に直面して生まれた医療の新しいカタチ~
2023.07.21
Vol.106
~日本における医療の弱みはウェルビーイングの浸透で改善できる~
2023.06.21
Vol.105
~現役復帰した今だからできることがある元オリンピアンとして伝えたいスポーツの力~
おすすめ記事
2016.10.20
SPECIAL TALK Vol.25
~若い世代は過去にとらわれないでグローバルな視点を持つこと~
- PR
2024.03.28
「運転中、彼の●●なところにキュン!?」ドライブデートに関する東カレ女子の赤裸々な本音
2023.10.11
ハラスメント探偵~通報編~
“頭をポンポン”しながら「頑張れよ」という上司に鳥肌!ハラスメント相談窓口に駆け込むも…
2023.08.16
ハラスメント探偵~通報編~
会社の休憩室で、ある食べ物を食べていた29歳男性。突然、女性社員に叫ばれ、戦慄の事態に!
- PR
2024.03.27
海外セレブの間で「テキーラで乾杯」が流行中!お祝いの席にぴったりな、ラグジュアリーテキーラとは
- PR
2024.03.26
GWの予定はもう決めた?北海道&沖縄で絶大に支持されるリゾートホテル4選
2015.11.27
金曜美女劇場
伝説と呼ばれた銀座の美ママが語る“出世する男”の条件とは?
2023.07.19
ハラスメント探偵~解決編~
「お仕事できないんでちゅか?」と嘲笑う、スーパー上司のやりたい放題に限界!匿名の内部通報の結末
2023.08.02
ハラスメント探偵~解決編~
「あんた、バカじゃないの!」思わず新入社員の腕を掴み、怒鳴ってしまった!これってパワハラ?
2016.09.30
年末に向けてマスターしよう!これが接待を制するとっておきレストラン8選
東京カレンダーショッピング
『秋田かまくらミート』:秋田を代表するブランド牛「秋田由利牛」!サシの美しい上質なしゃぶしゃぶ用サーロイン
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『パンツェロッティ』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
『レザンファンギャテ』:しっとりと濃厚で、コクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2024.03.18
「そういうとこ」で振られる男
「元カノと復縁できるかも」と喜ぶ34歳男。タイ料理店でデート中、彼女の表情が曇り…
2024.03.19
Editor's Choice~fashion~
感度の高いイマドキ女子から大人気!モネ“睡蓮の池に架かる橋”がフェイラーのキュートなハンカチに
- PR
2024.03.21
Editor's Choice~beauty & wellness~ 特別編
仕事もプライベートも充実している人ほど、〇〇投資している!?当たり前すぎて意外な生活習慣とは
2024.03.22
大人の週末ToDoリスト
長澤まさみ出演の映画や、バンクシーの展示…今週末いくべきイベント3選
2024.03.24
Editor's Choice~hotel~
シャンパンのフリーフローをテラスで堪能!渋谷の最新ホテルで叶う華やかな女子会