SPECIAL TALK Vol.26

~自然と調和する文化で育った日本人こそ、世界の食料危機を救える~

2020年のニューリーダーたちに告ぐ

生産者と購買者を直接つなぐ仕組みをつくり、農業に流通革命を起こしている株式会社エムスクエア・ラボ。代表の加藤百合子氏は食糧難への恐怖心から農業のエンジニアを志し、東京大学農学部で農業ロボットの研究に没頭。

NASAの植物工場プロジェクトに携わるなど世界を舞台に活躍し、帰国後、静岡で子育てと仕事を両立するなかで農業への思いが再燃、2009年に起業した。小柄な身体からは想像もつかない行動力で、今や農産物の生産から流通、教育までも視野に入れた事業を展開する。

そのモチベーションの原点はどこにあるのか。次世代のリーダーへのヒントがここに。

加藤百合子氏 エムスクエア・ラボ代表取締役

東京大学農学部で農業システムを研究し、英国クランフィールド大学で修士号を取得。その後、米航空宇宙局(NASA)の植物工場プロジェクトに参画。2000年に帰国し、キヤノン入社。2001年、同社を退社し静岡に移住。2009年エムスクエア・ラボを設立。流通革命を起こす「ベジプロバイダー事業」で第1回女性新ビジネスプランコンペティション大賞受賞。

金丸:本日はお忙しいなか、ありがとうございます。しかも静岡からお越しいただき、感謝しております。

加藤:こちらこそお招きいただきありがとうございます。

金丸:今日は今年8月銀座にオープンした『zero TOKYO』をご用意しました。

加藤:煌びやかで、まさに銀座というイメージのお店ですね。

金丸:本店がミラノにあり、本日腕を奮っていただく篠原シェフの創作和食が楽しめます。シェフは『NOBU』にもいらしたそうで、加藤社長と同じように世界を舞台に活躍されているんですよ。

加藤:お料理がすごく楽しみです。

金丸:加藤社長とは一度ある会合でご一緒させていただきましたが、まずは代表を務めていらっしゃる「エムスクエア・ラボ」が、どのような事業をされているのか教えていただけますか?

加藤:静岡県の菊川市という人口5万人にも満たない町で、ITを使った農業ビジネスをしています。主な事業に「ベジプロバイダー」というのがあるのですが、これは野菜を育てている農家と、こだわりの食材を求める飲食店や飲食加工会社とを直接つないでいるサービスで、購買者がいつ、どんな野菜を欲しいのかを事前に把握して、両者にとって最適な納期や量、価格を調整しています。農家に代わって要望に合った売り先を探したり、実際に畑に行って生育状況を見ながら、購買者が求める品質を実現できるようアドバイスをしたりしているんですよ。

金丸:農産物が生産者から消費者に届くまでに、通常は複数の業者が中間に入りますから、画期的な仕組みですね。この「ベジプロバイダー」事業で、2012年には日本政策投資銀行が主催する「女性ビジネスプランコンテスト」の大賞を受賞されています。

加藤:お陰様で農家の方からは、「自分が育てた野菜を食べてくれる人の声が聞けるし、納品先が決まっているので安心して作れる。収入も増えた」という声をよく聞きます。また、飲食店や食品加工業の方からは「野菜は美味しいし、料理のインスピレーションをもらえる」と好評です。

金丸:食の流通に革命を起こしていらっしゃる加藤社長の生き方は、女性の読者のみなさんの大きな励みになると思います。今日はいろいろお聞かせください。

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