SPECIAL TALK Vol.14

~空気を読みすぎない、その姿勢が突き抜けたサービスを創造する~

起業に不可欠なのはアイデア。それがなければ何も始まらない

森川:起業してみて思うのですが、日本は起業家に対して、早期に結果を求めすぎる節があります。私も事業を始めて1週間で「いつ収益モデルを作るのですか?」と聞かれ、1カ月後には「レポートは?」と問われ、3カ月後には「まだ売らないんですか?」と言われました。改めて世の中は厳しいと実感しましたね。

金丸:アメリカでは事業をじっくり見守り、寝かせて待つということに免疫があります。シリコンバレーのような成功体験がごまんとありますし。

森川:日本の若者からしたら、シリコンバレーのようなイメージをもってやりたいと思っていても、「趣味じゃないんだから、早く収益を出せ!」と怒るおじさんが大勢いて、やりにくいでしょう(笑)。

金丸:若者の起業について、どのように捉えていらっしゃいますか?

森川:起業する若者が最近増えているように感じます。ただ、良くも悪くもブームのようなところがありますね。古い言葉でいえば“丘サーファー”のような人がいるのが気になります。起業イベントに来て、プレゼンをして、しかし起業はしないという。

金丸:そうですね。起業するつもりだということで集い、その場でお酒を飲んで大志を語り、満足して帰る。気がつくと3年、5年と時が過ぎているというパターンですよね。

森川:それで、同じ分野で成功者が出ると「俺にも同じアイデアがあった」と語る(笑)。

金丸:以前経済同友会で、会員の方々に起業についてアンケートをとったことがあります。回答者の多くが中堅以上の会社の社員の方だったのですが、起業したいという人が、なんと8割を超えていました。

森川:すごいですね。そんなに起業したい人がいるとは。

金丸:では、なぜ起業しないのか、気になりますよね。

森川:はい、気になります。

金丸:一番の理由は、「アイデアがないから」という答えだったのです。

森川:えっ、それは面白いですね。

金丸:日本では、資金的な問題とか環境が整ってないからということを前提に、起業を支援する様々な制度が作られているわけですが、実態は、そもそも起業のアイデアがないんです。国も省庁ごとにベンチャーファンドを作っていますが、そういう意味ではいま、国はお金を出したくても出す相手がいない。お金が余っているような状況といえます。

森川:まさに、その通りですね。

金丸:資金がない、人材が確保できないということであれば、私たちも手を差し伸べることができます。しかし、アイデアがないでは、何も差し出すことはできません。

森川:会社員でもアイデアは不可欠ですし、アイデアがない人ばかり集まったら、会社が発展するわけがありません。

金丸:要するに、起業家思考の方にはアイデアが不可欠です。アイデアファーストと言ってもいい。

森川:常にやりたいことがないといけません。

金丸:ネットバブルの頃、いろいろな起業家の集まりに講師として招かれましたが、そこから起業した人はごくわずかでした。起業せずに、まだ準備期間と言って転職を繰り返すか、ビジネススクールに通い続ける。アントレプレナーになるためと言って、いつまでも土俵に上がらない人が本当に多かったと思います。

森川:確かにスキルがないとか、知識がないというのは、言い訳にしかなりませんね。

金丸:そう言っている人は、いつまで経っても足りていないのです。そして、リスクを取る覚悟がない。力も装備もなくても船を漕ぎ出し、荒波に揉まれて成長していくのが、起業だと思います。全部フル装備で豪華客船を作ろうとしたら、いつまで経っても海に出ることはできません。

森川:そして、最後は奥さんに反対されたから断念する、というケースもありますよね。

金丸:それもありますね。家族を説得できない社長が、社員を説得させられるわけがない。

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