学歴カレンダー Vol.12

学歴カレンダー:「30歳で独身だったら結婚しよう。」京大に心を奪われた彼との果たされなかった約束

神奈川県の公立高校から、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、丸の内の大手人材会社に勤める絵理奈(29)。周りの友人たちは“恋愛対象になるのは最低でも早慶レベル"と口を揃え、様々な学歴の男とのデートを試みる。

今まで様々な男性とデートしてきたが、直近では昔想いを寄せいていた会社の同期の立教出身の和樹の結婚を見送り、42歳の「元」慶應ボーイ・芹沢コスパ重視の一橋卒・淳一郎との恋にも破れた。穏やかな恋を求めて東工大卒の健二と付き合うが別れてしまい、その後同志社卒の裕太と出会う。

しかし、彼が想いを寄せるのは絵理奈の親友・美和子だった。その美和子が裕太の告白を断ったのは、京都に行ってしまった幼なじみへの想いからだった。




金曜日の18時半、東京駅の八重洲中央口で美和子と待ち合わせた。これから新幹線に乗って京都を目指す。

明日、高校時代の友人である慎太郎が京都で挙式をする。幼なじみである美和子は、彼と非常に仲が良かった。

慎太郎の話になるといつもムキになるので、その想いを彼女自身の口から聞いたことはない。

それでもいつもよく喋る美和子が今日は珍しく静かで、彼への想いが痛いほどに伝わってきた。

今日こそ慎太郎への想いを聞いてみたいと思う。


美和子「彼のことなら何でも知っているという優越感が自分を安心させていた。」


昔好きだった、そして今でもまだ想いの残る男の結婚式に向かう。何のためらいもなく招待したように思える慎太郎を少し恨んだ。

東京駅から2時間半、ようやく京都駅に降り立った。京都に来たのは10年ぶりだ。この土地独特の甘く湿った匂い。おばあちゃんの家に来たような、それでいてよそ者を決して受け入れない、そんな錯覚を覚える懐かしい匂いだ。

慎太郎とは幼稚園から高校までずっと一緒だった。家族のことから恋愛事情まで、お互いに起きたことはほとんど把握していた。ほのかな恋心に気づかなかった訳ではないが、彼のことなら何でも知っているという優越感がその想いを鈍らせていた。

そんな彼との仲に変化が起きたのは高校3年生の夏だった。

東大に行ける学力を持つ彼が敢えて選んだ大学とは?


梅雨がようやく明けた7月のある日の放課後、誰もいない教室で塾までの時間を潰していた。高校生活最後の大会でサッカー部を引退した慎太郎は、これから始まる大学受験という現実から少しでも離れていたそうだった。

話題は自然と志望大学の話になった。慎太郎は常に学年トップの成績で、有名私大の付属高校を蹴ってこの公立高校に進学した。誰もが彼は東大確実だと思っていた。東大のどの学部を受けるのか聞いたときに、予想もしない答えが返ってきた。

「まだ誰にも言っていないんだけど、京大に行こうと思って。」

思わず息を呑んだ。東大に行ける実力があるのになぜ京大を受けるのか。彼がいなくなる人生なんて考えられなかった。そんな想いをぐっと堪えながら、敢えて京大を受ける理由を聞いた。

「何でだろうね。」

いつもの優しい笑顔で首をかしげながらそう答えた。

今ならその理由が分かる気がする。頭も性格も良く非のうちどころが見当たらない彼は同級生のみならず教師からも絶大な信頼を集めていた。それでいて昔から大人びていて、いつも同級生から一歩引いているような雰囲気があった。そんな彼を澄ましている、と妬む声も少なくはなかった。

彼は、この土地から離れたかったのかもしれない。

その後無事京大に合格し呆気なく京都に行ってしまったが、美和子は2人の絆を信じていた。

お互い恋人と別れるたびに言っていたことがあった。

「30歳になってもお互い独身だったら結婚しよう。」

真剣に信じていたわけではなかったけど、心のどこかでその言葉を拠り所にしていた。

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